プレスリリースに記述はないが、最新のGRカローラにはプラスアルファの改良が施されている。ひとつはアルミテープ。前後バンパーのサイド部に裏側から貼っている。樹脂部品であるバンパーの帯電を解消することで、空気がきれいに流れるようになる。


もうひとつは、バッテリーアース性能の向上だ。GRカローラはGRヤリスと同様、12Vバッテリーをトランクルームに搭載している。アース端子を留める車体の塗膜を剥ぎ取り、金属面をしっかり出してメタルタッチするようにした。クルマにはいろいろな電装品が載っており、電装品を操作することで電圧が変動してドライバビリティに影響を与えることがある。それを防ぐためにアースをしっかりとるのはモータースポーツでは基本であり、その考えをGRカローラに持ち込んだ。


「アクセルも電制スロットルですから、アースをしっかりとることで発進のときにエンジンのつきが良くなり、スッと応答してくれる。そういう良さが出ます」と大阪氏。
「EPSもモーターですので、アースをしっかりとることが効いてきます。切り始めの情報量がすごく感じやすくなり、我々が狙っているクルマとの一体感や意のままの走り近づけることができます」
これらこだわりの改良が施された一部改良版のGRカローラは、極端なことを言えば、パーキングスピードでクルマとの対話が楽しめるクルマになっている。一部改良前の最初のGRカローラが対話のできないクルマというわけではなく、もっと良くなっているという意味だ。
実際には、駐車場で移動するような速度域よりも、公道を走らせたほうが断然気持ちいい。「対話を楽しむ」という意味では、サーキットを走らせるよりも、むしろ一般道のほうが向いているかもしれない。今回の改良の効果が現れやすいのは「過渡」だからだ。
ステアリングを切り込んだ際に手応えに引っかかりがなくスムーズで、しかも、しっかりしたクルマを操作している実感がともなう。ステアリングホイールを握る手のひらを通じて、路面の状態やクルマの重さ、動きといった情報がしっかり伝わってくるからだろう。
そのステアリングの動きに、クルマが素直に追従する。一連の動きを表現するのにぴったりな形容詞は「スッキリ」だ。クルマを操る行為が爽快である。力ずくで曲げている感じではなく、きっかけを与えるイメージ。クルマが思いどおりに狙ったラインをトレースしてくれるので余計な気を使わないし、だから楽しい。
発見だったのは、道路の継ぎ目が連続する首都高速を走っていても快適だったこと。しっかりしたボディと運動性能の高さはサーキットで確認しているが、背反しがちな乗り心地に異を唱えたくなるようなシーンはまったくなかった。乗り心地に関しては、助手席の乗員も同意見だった。付け加えておくと、アクセルペダルの動きに対する応答は相変わらず素晴らしく、鞭をくれたときに快感といったらない。
すでにお気づきかもしれないが、今回の一部改良は、最初の500台を手に入れた既存のユーザーもアップデート可能な内容になっている(具体的な提供方法は検討中とのこと)。「1回目のアップデートは既存のユーザーの方を置いていかない形でやりたいと考え、なるべく少ないパーツでアップデートできて、効果的な内容としました」と坂本氏。
新規ユーザーは完成度の高くなった最新のGRカローラを手に入れることができ、既存ユーザーは手に入れた状態と比較することで、進化の度合いを確認することができる。実に気の利いたアップデートだ。



