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投稿日: 2024.05.31 13:12
更新日: 2024.05.31 13:15

apr 2024スーパー耐久第2戦富士 レースレポート


国内レース他 | apr 2024スーパー耐久第2戦富士 レースレポート

ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE
第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
5月24日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ
観客数:5000人
5月25〜26日(決勝)
天候:晴れ一時雨 コースコンディション:ドライ一時ウエット
観客数:25日2万2200人/26日1万9800人

ノートラブルで走り抜いた富士24時間。運だけが味方せず、悔しい3位に

 2024年、全7戦で争われるスーパー耐久シリーズに、aprは引き続きFIA-GT3によって争われるST-Xクラスに臨む。5シーズン目となるDENSO LEXUS RC F GT3をドライブするのは永井宏明選手、小高一斗選手と嵯峨宏紀選手、そして新たに加わった小山美姫選手だ。小山選手はCドライバーを担当する。

 今年も第2戦は富士スピードウェイが舞台となる、シリーズ最大の山場『NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース』として開催。開幕戦で永井宏明選手の代役としてAドライバーを務めた、永井秀貴選手をEドライバーに、さらに中山雄一選手をFドライバーとして加えた6人体制で挑む。

 前回のスポーツランドSUGOでは予選2番手を獲得し、決勝では3位でゴール。ST-Xクラスで初めて女性ドライバーとして小山選手を表彰台に導き、まずは最低限の目標を達成した。もちろん、この結果に満足していようはずがなく、今回もちろん目指すは表彰台の中央に立つことだ。

公式予選 5月24日(金)12:00〜

 前回はノックアウト方式だった公式予選ながら、今回は従来のAドライバーとBドライバーのタイム合算で、決勝レースのグリッドが決することとなった。なお、普段どおりグリッド決定要素にはならないが、CドライバーとDドライバーもそれぞれ予選を、またEドライバーとFドライバーは、その後に行われるフリー走行を走ることが義務づけられている。

 木曜日に行われた専有走行では、小高選手が記した1分42秒117は5台中5番手ながら、トップとの差はコンマ5秒にも満たず。いかにST-Xクラスが群雄割拠状態であるか、どのチームにも勝機ありを示す証拠とも言えるだろう。

 金曜日の昼から公式予選が行われたが、肌寒いぐらいだった木曜日とは一転し、暑さを感じるまでとなっていた。実際、予選開始時の気温は29度、路面温度に至っては39度にまで達し、これが思いがけぬトラップとなってしまう。

 Aドライバー予選で永井宏明選手は、計測3周目からアタックを開始し、まず1分43秒399をマークした後、続く2周はタイムを縮めることはできなかったものの、チェッカーが振られるまで、あと数秒のタイミングで1分43秒219にまでタイムアップ。4番手につけることとなった。

 続くBドライバー予選では、練習中から一抹の不安を残していたブレーキ不調が、より深刻化してしまっていた。小高選手の攻めた走りに、音を上げてしまったのだろう。永井宏明選手同様、計測3周目からのアタックとなり、1分40秒976を記すも、次の周は1分41秒070にタイムダウン。5番手に留まり、早々に小高選手はピットに戻ってくる。タイム合算においても5番手とあって、DENSO LEXUS RC F GT3は3列目のグリッドから決勝レースをスタートすることとなった。

 もちろん、ブレーキ不調に手をこまねいていたわけではない。Cドライバー予選までに対策を施し、送り出された小山選手はユーズドタイヤながら1分42秒880を記して3番手につけ、Dドライバー予選では嵯峨選手がニュータイヤを履いて、決勝の向けた準備を整えながら1分42秒789で、やはり3番手に。最後のフリー走行では、さらにブレーキ対策を進めた結果、ほぼ支障のない状態に。ユーズドタイヤで周回を重ねた中山選手が1分42秒966を、ラスト10分を永井秀貴選手が走行。1分45秒049を記して金曜日の走行を終えた。

永井宏明選手

「暑くなっちゃったというのもあると思うんですが、クルマのセットアップはだいぶアンダーステアが強くて、まともにアタックできない状態だったかなと思います。小高くんはそれを直していったので、決勝を考えてセットをまた調整することになるはずです。昨日もいろいろ試していたんですが、それを分析して今日のセットにしようか、ってことになっていました。まだ今日は走る時間があるので、そこで調整できればと思います」

小高一斗選手

「昨日とは全然温度が違うんですけど、それ以前に今もそうですけど、昨日からブレーキにトラブルを抱えていました。あとは、路面温度が高いときのセットアップに対して、まだまだ追いついていなかったところがあったので、24時間は昼も夜も両方速くなくてはいけない、難しいんですけど、どっちに照準合わせるか、どうしていこうかなっていうところがあって。だけど昨日からのブレーキ回りのトラブルで、ちゃんと走れていないのでセットアップが進んでいないのが痛いです。メインの予選は終わったので、この後の走行でクルマをチェックしてからかなと思っています」

小山美姫選手

「温度が20度近く上がっちゃったのもあると思うんですが、それにしても昨日のフィーリングがあまりにもないというのから始まって。それとブレーキのトラブルもあったので、私の時にエア抜きして直してもらって出ていって、セットも私のときに一気に変えてみました。でも、方向性は合ってましたが、やり過ぎだったので。嵯峨さんが走るときには、また違った方向で変えていくようです。今はクルマのフィーリングとブレーキの感覚を確かめるっていうのがメインでした。クルマの感覚はちょっとずついい方向に行っているので決勝は期待できそうです」

嵯峨宏紀選手

「決勝に向けて洗い出しのようなことをやりながら、ニュータイヤを履いて走りました。内圧の上がり方とか、バランスを見ながら。いい方向には進んでいると思います」

永井秀貴選手

「ブレーキは僕のときには直っていましたので、良かったです。ラスト10分だけ走って、中山選手に詰めてもらったセットの先を試したのですが、思ったより難しかったですね、アンダーもオーバーも出ていたので、決勝は中山選手のセットが良いと思う。明日に向けて、それがいい方向に行ってくれることを願っています」

中山雄一選手

「ユーズドでガソリンけっこう積んで、決勝想定のテストしていました。昨日からいろいろテストをやっているなかで、いちばん決勝の暑いときも、夜涼しいときもどっちもいいバランスで走れそうなセットアップが見つかったので、あとは僕らのなかの100%を目指していけるかな、というところまでになりました。他車がどういうパフォーマンス出してくるか分からないけど、とにかく最後までノートラブルで、みんなが100%の走りをして、大きなミスなく走り切ったら、表彰台ぐらいは見えるかなと思って、頑張ってそのあたりを目指していきたいと思います」

金曽裕人監督

「ブレーキタッチが悪くて、予選を気持ちよくアタックさせることができずドライバーに申し訳ないです。でも、そのブレーキ周りは明日使うものではなく、決勝までに使い切ろうとしたのが間違いでした。24時間用にしっかりしたものを残していましたが、ユーズドを使いすぎました。もちろん予選一発のクルマを作っているわけではなくて、24時間を走り切れる、乗りやすい、トラブル出さないというのが今回のテーマ。本当はポールポジション獲るのが素敵なことですが執着はしていません」

「24時間は4回目のトライですが、1回目にトライしたときがいちばん成績良く2位、そこから表彰台が遠のいてるので、最低でも3位表彰台、それどころかオーバーオールも獲ってやるって布陣で、ドライバーもメンテナンスもやってきています。最後、中山選手にけっこう乗ってもらって、ロングディスタンスでしっかり乗れるセットを出せましたので、決勝はご期待ください」

DENSO LEXUS RC F GT3
2024スーパー耐久第2戦富士 DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/小山美姫/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一)

決勝レース 5月25日(土)15:00〜

 決勝のスタートを迎える土曜日の午前にはウォームアップが行われ、小高選手、永井宏明選手、小山選手の順で走行。本来、求めていた方向性を確認できたのは、またとない収穫ともなった。今回はピットストップ回数の義務づけはないが、ひとりのドライバーの連続乗車時間は3時間までとされ、またAドライバーの最低乗車時間は3時間36分とされている。

 決勝のスタートは例年どおり15時から。DENSO LEXUS RC F GT3のスタートドライバーは小高選手。期待に応えて1周目を終えた段階で、ひとつポジションを上げて4番手でレースを開始する。スタートから1時間13分経過した42周目に、最初のピットストップを行い、続いてドライブしたのは永井宏明選手。

 4位のポジションをそのままに上位陣と比べ1周0.5秒は速いタイムで順調に周回を重ねていく。交代から間もなく3番手の真後ろまで間隔を詰めることに成功。FCY(フルコースイエロー)が提示されるが、解除後の永井宏明選手にファインプレイが。FCY明けのポジション取りとスタートを決めたことから、一気に2台をパスし2番手まで浮上したのだ。さらに66周目のヘアピン立ち上がりで3台抜きのトップに浮上。ジェントルマンドライバー同士の対決では、豊富な実戦経験が活かされた格好だ。

 その後はリードを広げていき、86周目に小山選手にステアリングを託す。ピットタイミングで3番手に後退するも、先行する車両をパスすることは出来なかったが大きな遅れは取らず。ほぼ3時間経過した130周目、3番手のまま中山選手に交代。このあたりから雨が降り始めるも、まだ路面を濡らすまでには至らず。174周目を境に、さっそくWスティントが敢行される。この頃には、もうワイパーが動くようになっていた。

 213周目に再び乗り込んだ小高選手も、259周目を境とするダブルスティントを実施し路面が濡れていくなか、ギリギリまでウエットタイヤが使えるタイミングまでコース上で粘り、2番手が18秒前、4番手は6秒後方の3番手でピットイン。

 299周目からはダブルスティント予定で嵯峨選手が乗り込み、ここでようやくウエットタイヤが装着されたが、タイヤなのか車両なのか何故だかペースが全く上がらず6秒差あった3番手に対し、ほぼ2周遅れとなる4番手に大きくドロップ。344周目からは、これ以上のドロップを避けるべく、乗車予定ではない小山選手に急遽交代。

 ウエットタイヤでの走行が初めてで雨、夜の状況であった小山選手だが、なんとトップと遜色ないタイムで45周を走り切り折り返しの12時間目を過ぎた389周目までを走行。3番手との間隔も1.5周回まで取り戻し4番手のまま、中山選手につなぐ。もちろん中山選手は再びWスティント、437周目を境として、482周目までプッシュし続けたが上位陣との差は少ししか縮まらず。

 そして15時間を経過したところで、義務づけられた10分間のメンテナンスタイムを実施。雨も止み路面も少し渇きはじめ、ここから再び小高選手もスリックタイヤでダブルスティントとなり、526周目を境として571周目まで走行したところで、永井宏明選手にとって2度目の走行となる。

 この時点で、ST-Xクラスでメンテナンスタイムを行っていないのは一台のみ。DENSO LEXUS RC F GT3は、すでに上位陣の1台にトラブルもあり労せず3番手に浮上し走行を重ねていたが、トップと2周遅れは取り戻せずにいた。その一台がメンテナンスタイム10分を行えば、順位を上げられる可能性はあった。

 ところが、20時間目までに行うことが義務づけられていたがギリギリで、しかも直後にFCYが提示されるというタイミングで2番手はピットイン、ロスを最小限にできる運、いや、DENSO LEXUS RC F GT3的には不運……。

 ゴールまで5時間を切った616周目からは中山選手が、661周目からは小高選手が、706周目を境に最後まで2位獲得を諦めずにダブルスティントを猛プッシュし夜間の雨で失った2周遅れを、1周遅れまで取り返した。あとはチェッカーまで残り1時間あまり。そのまま永井宏明選手がゴールするだけとなっていたのだが……。しかし、あと10分というタイミングでDENSO LEXUS RC F GT3はピットに戻ってくる。土壇場になって、トラブル発生か?

 そうではなかった。今回、夜間での周回遅れを取り戻すために変則的な作戦に切り替えたことから、出番がなくなった永井秀貴選手にチェッカーを受けてもらおうという、Aドライバー永井宏明選手とチームによる粋な配慮であった。

 770周を走破し、3位でフィニッシュ。2戦連続で表彰台に立って嬉しくもあり、悔しくもある結果ではあるが、24時間にもおよぶ長き戦いをノートラブル、ノーペナルティで終えられた意義は、果てしなく大きい。

 あらゆる思いを、7月27〜28日にオートポリスを舞台とするシリーズ第3戦にぶつけて、今回と同じように精度の高いレースができれば、きっと悲願がかなう時が訪れるはずだ。

DENSO LEXUS RC F GT3
2024スーパー耐久第2戦富士 DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/小山美姫/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一)

永井宏明選手

「2位は見えていたので、最後まで諦めず終盤は小高選手、中山選手とプッシュし続けましたが、力およばずの3位。明け方から夜間の周回遅れを取り返すために変則的な作戦に切り替え、秀貴選手が乗るタイミングがなくなったので、みんなでゴールしたいというチームの計らいで最後に乗れて良かったです。優勝目指していたので悔しいですけど、表彰台にも乗れたし、マシントラブルもなく精いっぱい走れたので満足はしています。この調子で、次も確実に行きます」

小高一斗選手

「優勝できず3位なのですが、もう満足、疲れました(苦笑)。今年はピットミスもなくマシントラブルもなく、確実に表彰台に上れたので、良かったと思います。悔しさも少しありますが、それ以上に嬉しいのですが、一番はめちゃくちゃ疲れました、いっぱい走らせていただけて(笑)。来年こそは優勝したいです」

小山美姫選手

「私はいつでもどこでも行けるように用意はしていたんですけど、私が雨のなか、行くとは思っていなかったです。初めての雨だったし。まだ1回もこのクルマで雨のなか乗ったことなくって、ブリヂストンのウエットタイヤ使ったことなかったので、『本当に私?』って感じだったんですが、突然行ってくれ、順位を取り戻してくれと言われました」

「そんな状況でもトップと遜色ないペースで走れていたし、自分の経験にもなったし、皆様からも褒められ自信に繋がりました。欲を言えばもう少し走りたかったというのはありました。でも、素晴らしい経験をさせて頂けたので、嬉しかったです。内容のあるレースを今後も重ねていけたらと思っています」

嵯峨宏紀選手

「雨が降り始めの難しいコンディションのなかで、まわりは真っ暗で、ちょっと見えない状況だったので、かなり慎重に、24時間レースだから行ったんですけど、最後の方でエンジンマップとか試しながら、いちばん乗りやすい状況を見つけて渡すことができたので、それは良かったと思いますし、何より今年はトラブルなく走り切ったということがこの結果で、毎年毎年それを目標としていながらできてなかったので。3位という順位は良かったと思います」

永井秀貴選手

「ありがとうございました! 皆さんでつないでいただいて、最後に走らせていただいたので。本当はAドライバーでフィニッシュしていただきたかったんですが、決勝で1回も乗れていないからと、最後にこんなバトンも渡していただいて、嬉しかったです。最後は本当にコースも荒れていましたけど、気遣いながら、セーフティマージンを取りながら走ったので、安心してチェッカーまで運転できました」

中山雄一選手

「ダブルスティントも2回あって、雨もあって、いろいろシチュエーションある中で、マシンの速さは他のチームに比べると、ちょっと足りなかったかなという感じはしますけど、そんななか、ドライバー全員でつないで、ピットもノーミスだった結果が3位だったのかなと思います。でも、何かちょっとでもあればひとつ上の2位を狙えたかなというのもあったので少し悔しいです。チーム力の強さと勝ちへのこだわりを感じた24時間でした」

金曽裕人監督

「最後の秀貴選手のゴールは6名のドライバー全員で成し遂げた感があってよかったです。でも、最後の最後までジタバタして、なんとしてでも2位を獲りに挑戦していました。なので、残りの20分まで作戦は一切妥協せずでした。実は20時間前に、2位になったチームが、メンテナンスタイムを実行してなかったので、『よし、これで完全に手中に入った』と思っていました。ところが、彼らは上手で、FCY入りそうなときにピットイン、6周ぐらい背負うロスが彼らは4周で済んだ。これで夜中の2周遅れを取り返せることは皆無になった。だから、全体的な作戦というよりかは、彼らに運があった」

「あとはもうちょっとクルマを速くしないと、まだまだベンツには勝てない。短い距離だったら、ある程度ごまかしは効くけど、長い距離になるほど小さな“チリ積も”のところでまだ、ベンツの強さ、あと優勝チームの強さには勝ててはおらず。メンテナンスも完璧で、誰のミスもなかったのに……何かが足りませんでした。24時間は人が鍛えられ、ドラマチックだしスーパー耐久は楽しい。結果は、ちょっと悔しいですけど、祈願の24時間制覇のために絶対リベンジします。長丁場、応援ありがとうございました」

DENSO LEXUS RC F GT3
2024スーパー耐久第2戦富士 DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/小山美姫/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一)


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