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投稿日: 2024.10.08 15:21
更新日: 2024.11.01 17:24

ROOKIE Racing 2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 レースレポート


国内レース他 | ROOKIE Racing 2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 レースレポート

ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE
第5戦 SUZUKA S耐

2024年9月28日(土)〜9月29日(日)
鈴鹿サーキット(三重県)

All Photographs by Noriaki MITSUHASHI / N-RAK PHOTO AGENCY

ひさびさの参戦は試練の週末に。ひとりひとりに経験を残す

 ORC ROOKIE Corolla H2 ConceptとORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの2台で参戦した第3戦オートポリスから約2ヵ月。第4戦もてぎをスキップしたROOKIE Racingは、三重県の鈴鹿サーキットでひさびさのスーパー耐久のレースウイークを迎えた。第3戦にも参戦しなかった中升ROOKIE AMG GT3は、約4ヵ月ぶりのレースだ。

 そんな一戦に向け、32号車には第1戦SUGO以来となるORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptが登場した。ただしこの車両は、第1戦とは別物だ。モリゾウの提案により、モータースポーツの間口を広げ、参加者の助けとなるべく新たなロールケージが取り付けられているものだ。

 ロボット技術を使い、これまで熟練した職人の技術を上回る溶接を実現したロールケージは『SFA工法』と名付けられた技術を用いており、これまでのロールケージからは大幅に剛性がアップしていた。これにDATを組み合わせたものとなる。

 そして、これまで乗りづらさがドライバーから訴えられていたORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、リヤを中心に足回りを改善。さらにプロドライバーの視線をデータとして集め、将来の自動運転技術等に活かすトライもスタートしていた。

 また2戦をスキップしたことで、ランキングが4位に後退した中升ROOKIE AMG GT3は、このレースで勝利を飾り、ふたたびST-Xクラスのチャンピオン争いに名乗りを上げることを目指し、並々ならぬ意気込みで第5戦鈴鹿を迎えていた。

特別スポーツ走行/STMO専有走行
9月26日(木)〜9月27日(金) 天候:晴れ/曇り 路面:ドライ

 ROOKIE Racingにとってひさびさのスーパー耐久のレースウイークとなった第5戦は、9月26日(木)にスタートした。晴天で、間もなく10月になるとは思えない蒸し暑さのなか、まずは午後0時15分からの特別スポーツ走行グループ2にORC ROOKIE GR Yaris DAT Concept、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが出走した。

 ORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptは、まずは佐々木雅弘がドライブしたが、「このクルマは富士で一度乗ったのですが、印象がすごく良くなかったんです。剛性が上がってはいるものの、ボディにしなやかさがない。今回も合わせ込みはじめていますがまだまだ。でも良い方向に向かっています」とタイムは相応に出ているものの、苦い表情だ。

 一方、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは第3戦オートポリスからリヤの足回りを修正するなど改良を進めてきた。ただ、豊田大輔は「多少の改善はあっても、まだ気持ち良く走れていません」という。

 この悩みは、9月27日(金)も続いた。坪井翔は「いまの範囲からすれば良くなっていますが、そもそも求めているものはその範囲の外にあるんです。クルマの状況はかなり悪いです」とORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの状況を語った。「タイヤが新しいときは良いのですが、グリップがなくなるとイヤなところが出てしまいます」

 さらに、ORC ROOKIE Yaris DAT Conceptは、この日朝からエンジン交換を強いられた。「トラブルがあって、走ることはできるのですが、このまま走るとリスクがある」と石浦宏明監督。作業は午後の走行を前に終わったものの、やはりトラブルが解消しない。チームはエンジンをその場で解体するほどの作業を強いられながらも、原因究明に取り組んだ。この日は結局1周もできず。問題は深刻そうな印象だった。

 一方、2戦ぶりのレースとなる中升ROOKIE AMG GT3は、「チームとしても感覚を取り戻しながら、パフォーマンスはしっかり上げたいと取り組みましたが、昨年とはタイムも大きく違うので、目指すところを探っていた一日でした」と片岡龍也監督が語る初日を経て、9月27日(金)の2日目の2回の専有走行も精力的に取り組んだが、ベストタイムとしては午前は4番手、午後は5番手と伸び悩んだ。

 鵜飼龍太は「第2戦からしっかりいろんな課題に取り組み準備はしましたが、鈴鹿はやはり走れば走るほど難しいです」という。「ひとつひとつ確認しながら予選に向けて準備したいです」と翌日の予選、そして決勝に向けて語った。

公式予選
9月28日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 明けた9月28日(土)の鈴鹿は曇り空。夜半までの作業を経て、ORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptはエンジン内部、DAT内部のトラブルを発見。対策を施し、午前10時30分からのフリー走行では電気系トラブルがあったものの、ようやくトラブルを解決することができた。

 そんなフリー走行を経て、迎えた午後2時からの公式予選。まずはグループ2のAドライバー予選に、モリゾウが出走した。2周目、2分23秒178という素晴らしいタイムを記録したが、3周目のスプーンでモリゾウは車速が上がらないことを感じ、コースサイドに一時クルマを止めることになってしまった。

 ただなんとかピットに戻り、確認を行ったところ、スロットル系のトラブルであることが判明。すぐに問題は解決し、Bドライバー予選の佐々木は2分17秒809までタイムアップ。今週ようやくドライブすることができた石浦宏明、小倉康宏とともにしっかりと予選を終えた。

 一方、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptはまだまだ乗りにくさはあるものの、佐々木栄輔が2分22秒213を記録。坪井翔が2分18秒253を記録し、ORC ROOKIE Racingの2台は総合で35〜36番手につけた。

 そして、専有走行まではやや苦しい展開だった中升ROOKIE AMG GT3は、Aドライバー予選で鵜飼が2分05秒858という好タイムを記録「今あるなかでのポテンシャルは引き出せたのではないかと思います」という納得のタイムとなった。Bドライバー予選では、蒲生尚弥が2分03秒231に。合算でフロントロウの2番手につけた。

「持ち込みから考えると、かなり乗りやすい状態で予選ができました」と片岡龍也監督は振り返った。

#32 決勝レース
9月29日(日) 天候:曇り 路面:ウエット〜ドライ

 9月28日(土)のAドライバー予選まで、さまざまなトラブルに見舞われてきたORC ROOKIE GR Yaris DAT Concept。とはいえ、Bドライバー予選以降トラブルは鳴りを潜めていた。

 迎えた9月29日(日)の決勝日、鈴鹿サーキットは曇天だったが、集まったメディア向けにSFA工法を使ったロールケージの説明をパドックで行っていた頃、サーキットには雨が降り出した。時折強く降り、路面コンディションはウエットに。すでにチームはスタートドライバー申請を行っていたが、今回申請されたのはモリゾウだ。午前11時からのスタート進行の間に少しずつ路面は乾いており、ジェントルマンをスタートに据えていたチームの多くはウエットタイヤを履いていた。

 しかし決勝を前に、佐々木雅弘はモリゾウにスリックタイヤでのスタートを提案した。「モリゾウさんはニュルブルクリンクでもたくさん走っていますし、今のモリゾウさんならいけると信じていました。判断を誤ったら大変なことになるとは思いましたが(苦笑)」と佐々木は振り返ったが、その判断にモリゾウはこれ以上ないかたちで応えた。1周目からアクシデントが起きるスリッピーな状況のなか、モリゾウは素晴らしいペースで走りはじめたのだ。

 ORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptは、DATの使用やロールケージの違いをのぞけばST-2クラスの車両と大きくは変わらない。しかし、そのST-2クラスのGR Yarisとほとんど変わらないタイムで序盤のレースを進めたのだ。スタートから54分のスティントをきっちりこなすと、佐々木にステアリングを託した。

 そんなモリゾウの頑張りに、佐々木も応えないわけにはいかない。フルコースイエローが多発する荒れた展開のなか、一度ペナルティを消化した後、2分22〜23秒ほどの好ペースで周回を重ねた。

「予選までは僕が求めている動きにはなっておらず、今日やりたいことを試したのですが、どんどん良くなっていました。金曜は走れませんでしたが、トラブルも皆さんが解消してくれたおかげで今日走ることができました」と佐々木。

 スタートから2時間25分を走り、佐々木は小倉にステアリングを託した。この週末、あまりドライブする機会がなかったが、小倉は「運転が楽しめるのはやはりDATですね。それと剛性が上がっていますが、佐々木選手のセットアップのおかげで以前のクルマに近づいていますし、今回詰め切ることはできませんでしたが、どんどん良くなっています」と快調にレースを進めていた。

 しかしスタートから3時間25分過ぎ、ヘアピンで小倉はまさかの事態に遭遇した。鵜飼龍太がドライブしていた中升ROOKIE AMG GT3と接触してしまった。小倉はイン側のグリーンに車両を一時止めたが、幸いふたたびコースに復帰することができた。ピットに戻った後、小倉と鵜飼はお互い苦笑いで詫びあった。

「一時はどうなることかと思いましたよ(苦笑)」と小倉。

 ORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptは幸いダメージもなく、最終スティントを石浦が担当することになった。石浦は終盤一度ピットに戻ることもあったが、確実に周回を重ね、ST-2クラスの車両を2台上回る総合30位でフィニッシュした。

「足回りを佐々木選手が煮詰めてくれたおかげでバランスも悪くなく、決勝ではST-2クラス優勝の#225 GR Yarisと同等か引き離すくらいのペースで走ることができました。ボディ剛性と足回りの良さが活きたのではないかと思います」と石浦。

「予選からはトラブルもなかったですし、最近32号車はトラブルも多かったので、その流れを断ち切ることができたと思います。実は木曜、頭に鳥の糞が落ちてきたのですが、運がついてきたということですかね(笑)」

 土曜までは苦い表情が多かったチームだが、最後はしっかりと成果を示すことができた。石浦監督をはじめ、レース後のメンバーには安堵の笑顔が生まれていた。

#28 決勝レース
9月29日(日) 天候:曇り 路面:ウエット〜ドライ

 公式予選から一夜明けた鈴鹿サーキットは、朝から曇り空。走行初日こそ蒸し暑かった鈴鹿だが、この日は雲も厚く気温も低い状況で迎えた。そんななか、午前9時30分過ぎには強い雨が降り出し、今週末初めてコースはウエットコンディションとなってしまった。

 午前11時からは決勝レースに向けたスタート進行が始まったが、レースに向け給油を行っていたORC ROOKIE GR86 CNF Conceptにまさかのトラブルが襲いかかった。原因は燃料漏れ。安全に関わるものであり、交換は急務。ただ燃料タンクはそう簡単に外せるものではない。

コース上にライバルたちが整列し、グリッドウォークで賑わうなか、チームは大至急で燃料タンク修復の作業をスタートさせたが、グリッドから戻ってきた豊田大輔は「厳しいかもしれません」とポツリ。ドライバーたちはメカニックを信じて、ORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptや中升ROOKIE AMG GT3の戦いぶりを見つつ、ピット裏で控えることになった。

 メカニックたちは懸命な作業で修復を進めていったものの、レースは刻一刻と進んでいく。そんななか、レーススタートから2時間強が過ぎたころ、現場での修復は不可能であるとして、残念ながらリタイアが決まった。

「誰も悪いことをしているわけではないので……。今回のことを再発防止ができるのかは分かりませんが、準備をしてきたのに起きてしまった。こういうこともあるんですね。とはいえ、前を向いていきたいと思います」とテントで見守っていた大輔は悔しい表情を浮かべ、メカニックたちに感謝を伝えた。大輔が言うとおり、チームスタッフの誰が悪い訳でもない。だからこそ悔しさも募る。

 その思いは、専有走行でも新たな視線のテストを行っていた坪井も同様だ。多くの車両が走るなかでふたたびゴーグルを装着して、他車がいる中での視線のデータを集めるはずだった。

「悲しいですね。本来、レースがスタートしてからの混戦のなかで、どんな危険回避をしているかのデータを集めるはずだったのですが。その目的を果たせず残念に思っています」と坪井は語った。

 そして「これまで問題があったリヤの動き、足回りの違和感はいろいろ確認も進み、決勝レースに向けて用意していたセットアップは今季のなかでは乗りやすくなっていたんですが」と悔しがったのは大嶋和也監督。

「ギヤが渋かったところなども見直してもらいましたし、確実に進歩はしていると思います」

 その進歩を、5時間の決勝レースでしっかりと確認したところだったが、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは残念ながらピットでレースを見届けることになってしまった。

 とはいえ、これもレース。『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』のための大きな試練でもある。次戦は岡山国際サーキット。チームはさらに強くなって戻ってくる。

#1 決勝レース
9月29日(日) 天候:曇り 路面:ウエット〜ドライ

 迎えた9月29日(日)の決勝日。鈴鹿サーキットは朝から曇り空となっていたが、スタート進行の1時間半ほど前から、サーキットには雨が降り出した。時折強く降るときもあり、コース上は完全にウエットとなった。

 ただ、午前11時からのスタート進行の間に雨は止み、コース上は少しずつ乾きはじめた。今回は50台以上の車両が一斉にレースを戦う。路面は急速に乾いていくとチームは判断し、スタートドライバーを務めたジュリアーノ・アレジはスリックタイヤを履いて5時間のレースのスタートに向かっていった。

 1周目、まだ路面が濡れるなか、アレジはなんとか4番手をキープしていく。ST-Xクラスの中にはプロがスタートを務めスリックを履く車両、Aドライバーがスタートを務めウエットを履いた車両が混在しており、アレジはウエットを履いた車両のピットインにともない2番手にポジションを上げた。ただ、後方からは#81 GT-Rが接近。アレジは序盤から緊迫した戦いを強いられると、21周目、先行を許してしまう。

 とはいえ僅差の2番手。トップはまだ射程圏内だ。スタートから1時間24分という長いスティントをこなしたアレジは「難しいコンディションで、対応するのが大変だったね。クルマの重さも感じたけれど、しっかり繋げたと思う」と戦いを振り返った。

 この頑張りを繋いだのは、監督でもある片岡だ。この頃には完全にドライに転じ、50周を過ぎる頃になるとトップを走っていた#31 RC F、#81 GT-Rと三つ巴の戦いを展開。サーキットを沸かせた。#31 RC F GT3はAドライバーがドライブしているため早くかわしておきたかったが、実力ある相手。2台をかわすには3周を要することに。しかし片岡はクリーンなバトルでこれを制すると、トップに立った。

 片岡は70周目、ピットに中升ROOKIE AMG GT3を戻すと、鵜飼に交代する。「スティント前半はペースも速く、落ち着いて走ることができました」という鵜飼はピットアウト後、先行した#31 RC F GT3の後方につける。#81 GT-Rがクラッシュしたこともあり、2番手をしっかりキープして戦っていた。

 そんななか、まさかのアクシデントが起きた。スタートから3時間25分過ぎのこと。ヘアピンで小倉康宏が駆るORC ROOKIE GR Yaris DAT Conceptに遭遇した。鵜飼は抜きにいったが、コーナーにいたもう1台とのやり取りがうまくいかず、小倉と接触してしまったのだ。小倉はグラベルにストップしてしまう。

 幸い、鵜飼と小倉のアクシデントはペナルティ等もなく、小倉もピットに戻ることができたが、鵜飼は気が気ではない。「メンタルにきました(苦笑)。コンディション変化などの対応が理解できはじめましたが、とにかくいろんなことが頭をよぎりました」と鵜飼。

 チームメイト同士のまさかの接触に、鵜飼がその後104周を終えピットインした後、小倉と鵜飼はピット裏でお互い苦笑いで詫びあった。そんな雰囲気もROOKIE Racingならではか。

 中升ROOKIE AMG GT3は、車両のダメージもなく、最後はエースの蒲生がしっかりと最終スティントを走り切り、2位でレースを終えることになった。

「今週は性能調整やウエイトも厳しい状況でしたし、2ヵ月のブランクがあるなか、苦しい週末になりました。しかしそんな中で鵜飼選手の成長もあり、勝つチャンスもあるかと思いましたが、#31 RC Fが今週はスキがありませんでしたね」と片岡監督。

「とはいえ、しっかり2位をつかみランキングも上げられたので、残り2戦に繋がるレースができたと思っています」

 片岡監督が語るとおり、ランキングでもまだまだ逆転のチャンスがある。今季は毎戦のようにウイナーが変わる混戦模様だ。2ヵ月ぶりのレースで、中升ROOKIE AMG GT3はそのポテンシャルと強さをみせた。次戦岡山で、目指すは勝利のみだ。

MORIZO’s Voice

今回は3台そろって完走、1号車は優勝という目標は達成できませんでした。

けれど、我々にはチャレンジしたという努力の足跡が残ったと思います。

努力をして結果が出れば、それは自信になるでしょう。

努力もせずに結果が出ると、傲慢になります。

では、努力はしたけど結果が出ないときにどうなるか。

我々ひとりひとりに経験が残ります。

才能というのは有限だと思いますが、努力は無限です。

我々は努力をし続けていくことが大事だと思います。

改めて皆さんに、ご苦労様でした。そしてありがとうと伝えたいと思います。

ROOKIE Racing オーナー 豊田章男

ORC ROOKIE GR86 CNF concept
2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 ピットで修復作業が行われるORC ROOKIE GR86 CNF concept

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