シーズン開幕戦は最後の最後に大逆転!
チームの成長が嬉しい勝利に繋がる
ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE
第1戦 もてぎスーパー耐久 4 Hours Race
2025年3月22日(土)〜23日(日) モビリティリゾートもてぎ(栃木県)
入場者数:3月22日:6,200人 3月23日:6,700人
■PRACTICE 特別スポーツ走行/STMO専有走行
3月20日(木)〜21日(金)
天候:晴れ 路面:ドライ
ST-2クラスのシリーズチャンピオンに輝いた2024年シーズンを終え、KTMSは6年目のスーパー耐久のシーズンを迎えた。今季もGR YARISを走らせるが、ドライバーの顔ぶれに変化がみられた。Aドライバーには、これまでKYOJO CUPをともに戦ってきた富下李央菜を迎え、Bドライバーには若きTGR-DCドライバーの鈴木斗輝哉を起用。このふたりを、KTMSのスーパー耐久初年度からチームを引っ張る平良響が支える体制が組まれた。
3月に行われた公式テストでは降雪の影響もあり走行時間が少ない状況で、3月20日(木)から行われた特別スポーツ走行、専有走行が重要なセッションとなったが、特別スポーツ走行1回目は平良から富下、2回目は鈴木、専有走行1回目は平良と富下、2回目は富下と鈴木が周回を重ね、ドライバー交代の練習も頻繁に行った。
「初日は感覚を掴めてきた気がしたのですが、2日目は悪いところを直そうとしたら遅くなって」と富下はデビュー戦に向け浮かぬ表情。また鈴木は「ハコ独特の動かし方などもありましたが、少しずつ慣れてきました。ペースも良くなってきました。なんとか平良君と同じくらいで走れるようになってきました」という状況だった。ただ、平良はふたりの走りをそれほど悪いものではないと評価。「レースに向けて有益なデータを得られたのではないか」と専有走行を振り返った。
■QUALIFY 公式予選
3月23日(日)
天候:晴れ 路面:ドライ
今回のスーパー耐久第1戦は変則的なスケジュールで、3月22日(土)は45分間のフリー走行だけが行われるスケジュール。KTMSは、ここで平良が確認を行った後、富下と鈴木の予選シミュレーションを行った。
そして迎えた3月23日(日)は、午前8時30分から公式予選が行われた。2024年同様、ST-2クラスは予選一発のスピードではライバルたちに分がある。Aドライバー予選では富下が2分05秒522を記録するも5番手。Bドライバー予選では、鈴木が2分04秒417を記録も4番手と、合算ではST-2クラスの5番手という結果となった。
とはいえ、ライバルたちがグリッドで前に行くのは織り込み済み。Cドライバー予選では平良が決勝レースを見据えながら2分08秒205を記録しつつ、午後の決勝に向けた準備を進めた。
■RACE 決勝レース
3月23日(日)
天候:晴れ 路面:ドライ
公式予選終了からわずか2時間強というインターバルで迎えた午後0時30分からの決勝レース。KTMS GR YARISのスタートドライバーを務めたのは鈴木だ。オープニングラップ、鈴木は初めてのスーパー耐久でのレースながら、冷静に5番手につけていく。
鈴木はレース序盤、着実にレースを進めていくが、前を走っていた#6 ランサーがトラブルに見舞われるなど、このレースはST-2クラスにトラブルが相次いでいく。そんな状況を後目に、鈴木は3番手の#743 シビック・タイプRとのギャップを縮めていくと、テール・トゥ・ノーズのバトルに持ち込んだ。
ただ、シビック・タイプR勢はストレートが速い。なかなかオーバーテイクには至らなかったが、先に#743 シビック・タイプR がピットイン。鈴木は3番手に浮上し、28周までのファーストスティントをこなすとピットイン。富下にステアリングを託した。
鈴木と同じくスーパー耐久デビューレースとなった富下だったが、動じることなくマイペースでレースを進めていく。「うまく走ることができていたかは分かりませんが……」という富下だったが、デビューレースとしては十分な走り。途中#743シビック・タイプRに行く手を阻まれたが、58周までの自らのスティントをこなすとピットに戻り、ここでチームはタイヤ無交換作戦を敢行。レース終盤を平良に託した。
このピット作業の早さで平良は3番手に浮上することになるが、トップの#72 シビック・タイプR、2番手につけた#13 GR YARISとはややギャップが広がっていた。
平良は粘り強く前を追っていったが、92周目にST-2クラスには波乱が起きた。ここまでトップを走っていた#72 シビック・タイプRに対し、ピット作業違反によるドライブスルーペナルティが課されたのだ。
#92 シビック・タイプRは#13 GR YARISの直後に入り、テール・トゥ・ノーズの争いに。平良はハイペースで2台との差を縮めた。
#72 シビック・タイプRがルーティンの作業を終えた後、フィニッシュまで44分を切った88周目、ついに平良は#72 シビック・タイプに代わってトップに立った#13 GR YARISとの差を2秒以内まで縮めピットに戻った。
平良から交代して最終スティントを担当したのは鈴木。一方の#13 GR YARISは、最終スティントでタイヤ無交換作戦を行ってきた。2台の差は12秒ほど。あとはこれをいかに削っていくかとなった。
2台の差は残り16分あたりで急速に縮まり、残り5分でその差はついに1秒以内に! 108周目、ついに3コーナーで鈴木は#13 GR YARISをオーバーテイクし、そのままST-2クラスのトップでチェッカーを受けた。
スピードの面ではライバルたちに分があるなかで、ドラマチックな展開で掴んだ逆転勝利。KTMSの2025年開幕戦は嬉しい優勝で幕を閉じることになった。そして、この勝利は若手ふたりとチーム全体に大きな自信と成長をもたらすことになった。
■DRIVERS & ENGINEER VOICE ドライバー&エンジニアコメント
富下 李央菜 RIONA TOMISHITA
まだ優勝できた実感が湧かないですね(笑)。最後は斗輝哉くんが追い上げてくれたおかげですし、こういう勝利ができたのは嬉しいですね。シーズン開幕で良いスタートが切れたと思っています。私のスティントではうまく走れたかどうかは分かりませんが、ライバルのストレートが速く、引っかかってなかなか抜くことができず悔しい思いをしたので、次の富士24時間までにしっかりと自分自身の力をつけたいと思っています。
鈴木 斗輝哉 TOKIYA SUZUKI
最後はライバルもタイヤ無交換作戦で来るとは思っていなくて、うしろからもライバルが迫っていると聞かされ、プレッシャーもあったのですが、クルマも壊さずドライビングのミスもなく走り切ることができ、こうして優勝を飾ることができて良かったです。この週末を通じて、平良選手がやはり一枚も二枚も上だと感じましたし、今年一年通じてドライビングをはじめ平良選手からたくさん吸収していきたいと思います。もっともっと自分の速さにも磨きをかけたいと思っています。
平良 響 HIBIKI TAIRA
開幕戦を勝利で終えることができて良かったです。ふたりは初めてのスーパー耐久でしたし、少しずつ成長してシーズン途中で勝てればと思っていたのですが、ふたりとも開幕から落ち着いてレースを戦ってくれましたし、最後は鈴木選手がオーバーテイクも決めてくれました。優勝を飾ることができると思っていなかったので、嬉しい驚きでしたね。次戦は富士24時間になりますが、ウエイトが載るにしろ、ノーミスで戦うことができれば結果も自ずとついてくると思っています。
上田 昌宏 MASAHIRO UEDA 神戸トヨペットエンジニア
最後の2周で鈴木選手がオーバーテイクを決めてくれて優勝することができましたが、実は富下選手のスティントでなかなか抜けずにいたことでリヤタイヤを護ることができました。結果的にリヤタイヤ交換なしでいけたので良かったですね。正直、今回はドライバーたちとメカニックが成長できればと思っていたくらいなので、勝てるとは思っていなかったのですが、みんなが一気に成長してくれました。この成長を次戦の富士24時間にも活かしていきたいと思います。