今年新設されたST-TCRクラス。完走さえ果たせば、初代チャンピオンが決まる98号車Modulo CIVIC TCRの黒澤琢弥/石川京侍/加藤寛規組だったが、なんと予選で石川がクラッシュ。マシンを修復し、決勝にはピットスタートでの参加が認められたが、大事をとって石川は欠場。さらに中盤にはターボ系のトラブルに見舞われた。ピットで必死の修復が試みられ、もし再出走できなければタイトルが掌中からこぼれてしまう状況に。
なんとかピットを離れることには成功した98号車は、無事チェッカーを受けて、黒澤と石川、加藤が初代チャンピオンに輝くこととなった。

「最後の砦だけは守りました。はっきりとした原因は分からないけど、ブーストがかからなくて、一時は完全にノーパワー状態。最後まで走れて良かった」と黒澤。

一方、チームメイトの不運とは対照的に、97号車Modulo CIVIC TCRの伊藤真一/幸内秀憲/中野信治組は、終始絶好調。ポール・トゥ・ウインで最終戦を飾った。
「最初は知識もなかったし、興味もなかったけど、やってみたらこんな楽しいレースはなくて。こんなに怖い顔せず済んだ1年間って、僕のレース人生には今までなかった」と中野。
ST-2クラスでは、すでに59号車DAMD MOTUL ED WRX STIの大澤学/後藤比東至組が王座を決めていたが、6号車新菱オート☆DIXCEL EVO Xの冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄組が、一矢報いることに成功した。

予選は合算タイムがコンマ1秒にも満たない差だったが、決勝になると、菊地が早々にリードを築き、それを冨桝と大橋が守る格好に。今季2勝目をマークして、ランキング2位も確定させた。
「今年はクラッシュこそなかったけど、リタイアもしたし、優勝もできたし、波乱万丈のシーズンでしたが、最後こういう形で締めくくれて最高です」と冨桝。
ST-3クラスでは、39号車ADVICS TRACY RC350の手塚祐弥/前嶋秀司/鈴木陽組が今季2勝目をマーク。レースの大半をリードしていたが、完走さえ果たせばチャンピオンが手に入る62号車DENSO Le Beausset RC350の嵯峨宏紀/中山雄一/山下健太組が2位につけたことで、ランキングでは涙を飲んだかと思われた。
ところが、レース後の再車検でDENSO Le Beausst RC350には、燃料タンク最低地上高違反があって失格処分。これで手塚と前嶋、鈴木に期せずしてタイトルが舞い込んでくることになった。

「開幕の10日前に、前嶋さんに突然電話をもらって『俺が教えてやるから』という誘いに、すぐ飛びついたのが、すべてでした。前嶋さんの真似をして、できるようになったことでオートポリスで優勝を飾れて、まさかこんな結果になるとは!」と手塚は喜びを隠せない様子だった。