中子:そういえばあの2レース目、よーいドンした1コーナーでも僕、本山くんにドンって追突しているの知ってた? あれ、実はこっちも押されて玉突きみたいなかたちで当たっているんだけど、悪いなと思いながらミラーを見たら目が怒っている感じでさ(笑)。
本山:それは仕方がない範囲だったので、別に「ぶつけられた!」とは思っていませんよ。でもヘアピンで当たったときは……僕がグラベルに止まった後なのに、中子さんってば、そこからさらに僕にぶつかりながら、僕を押しのけながらコースに戻っていきましたよね(笑)。
中子:バックギヤに入れる時間はない、ぶつけて出た方が早くコースに戻れるかなと思って(笑)
本山:なんでそこ、ぶつかるんですか(笑)。僕、あれには頭にきました。あの場面でぶつかりながら戻るような人、いませんから(笑)。ふたりが当たってダメになった時点で中子さんはもうチャンピオン確定なんです。
中子:まあ、事実はそうだね。
本山:だからいいというわけじゃないですけど、当時は“やられたらやり返す”選手が少なくなかったのは事実です。変な話、“やったもん勝ち”だった。僕も仕返しはマズいよなと思ってはいたんですが……。
中子:僕も24ぐらいのときに鈴鹿のレースで接触して1年間ライセンス剥奪処分を受けたことがあった。相手がほんとにひどいヤツだったので、コントロールタワーの、みんなが見ている前でケンカして。だからその気持ちは分かる。年齢的にもそうだし、1レース目のイザコザで興奮しているところにあの状況を作った僕も悪いし、もし自分が本山くんとおなじ立場でもそういうふうにしか行動できなかったと思いますね。
──コースを1周して本山選手に追いついた時、何を考えられましたか?
中子:あれ? なんでそこを走っているんだろうな、終わっているはずなのになと思いながら行ったら……結局ぶつかって終わった。あれは……確信犯だったよな絶対(笑)。
本山:いやいやそんな(笑)。
中子:最初に僕がコントロールタワーに呼ばれて話を聞かれました。終わって部屋から出たらちょうど本山くんがいて、目が合って、ふたりとも何もしゃべらなかったんだけど、“やっちまったな”みたいな感じですれ違った。
本山:すぐに「すみませんでした」と。
中子:でも本当に何もなかったですね、お互い。こっちはヘタクソなのが露呈しただけです。
<中略>
本山:あのレースで中子さんとの間にあったことについては、怒るとか相手を嫌いになるとかっていう気持ちは1ミリもなかったです。それよりも……JTCCでは無駄に幅寄せしたりとか、故意にぶつけてくるような人たちがいて、そっちの方が嫌悪感でしたね。
中子:往生際の悪いヤツ、いたよね(笑)。
本山:いろんなキャラクターの人がいました。でもそういう意味でJTCCはすごく面白かったですけどね。やっている側からすれば、ああいう“熱”っていうのは今のレースにない部分だと思いますし。やっぱり勝負の部分では必要なところじゃないですか。良くも悪くも“人間味”が出て面白いレースだったと思います。
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ここでふたりが語っている以外にも、対談ではふたりの知られざる接点や接触劇の後日談、それぞれのドライビングやレースキャリアについてなど、実に多くのことが語られた。ふたりがあのときのことについてメディアから取材を受け、記事になったのはこれが唯一で最初のこと。レーシングオンNo.506はJTCCファンならずともモータースポーツフリークならば必読の内容となっている。
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