GT3マシンよりも市販車に近いポテンシャルを発揮するGT4マシンだが、どれほど市販車に近いのだろうか。
肩野エンジニアは「最新のGT4マシンを担当するのは初めてになりますが、GT3と違って本当に市販車ベースという印象です。ランボルギーニ・スーパートロフェオなどのワンメイクレース車両よりも市販車に近いと思います。なので、安心できる部分も多いので、よく出来ているクルマだと思います。ただ、レーシングカーとしての対策が足りないのじゃないのかなという部分もあります。だから、僕らもやりながら色々勉強していってる感じです」とGT4マシンの第一印象を語る。
これまでもGT3マシンやワンメイクレース車両のエンジニアリングを担当してきた肩野エンジニアだが、バンテージGT4の場合、ポテンシャルだけではなく、メンテナンス面でも市販車に近いと話す。
「フロントにチンスポイラーはついてますけどバンパーは市販車のまま、インナーフェンダーもそのままなので、とにかく部品の取り外しなどで手間がかかるクルマです。ラジエーターやフレームの一部は変わってますけど、配管のレイアウトはそのまま。エアコンもついてますので、市販車をいじっているイメージです。そのため、ラジエーターの脱着だけでも時間がかかってしまいます。レース中に接触やクラッシュなどのトラブルがあれば修復に時間がかかるのは間違いないですね」
実はD’station Vantage GT4は第1戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』を前にしたテスト中、縁石でフロアにダメージを負ったため、エンジンを載せ替えて富士に持ち込まれている。肩野エンジニアは「市販車のエンジン載せ替えと変わらない作業なので、流石にこれが決勝レース中だと、作業時間を考えてもやってられないレベルです」と語る。
「ただ、バンテージGT4がクルマとして遅いとは思わないです。勝てるチャンスもあると思いますし、そのためにトラブル無く走ることが絶対条件になると思います。周りのクルマがどうというよりも、トラブル無くちゃんと走ることができれば結果はついてくるんじゃないかなと考えています」
市販車に近いレーシングカー故に、耐久性に優れるGT4だが、レーシングカーとして考えればメンテナンス面で部品の脱着に時間がかかってしまう。だからこそ、トラブル無く走りきることがST-Zクラスで勝利を掴む絶対条件となるのだ。
2020年シーズンの第1戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』では、Aドライバー予選で星野辰也が1分50秒164をマーク、Bドライバー予選では、織戸学が1分49秒487をマークしクラス3番手で終えると、翌日から行われた24時間の決勝レースでは、ドライバーにとっても、エンジニアにとっても初めてのGT4でのレースとなったなか、クラストップから4周遅れとなるクラス3位でチェッカーを受けた。
10月10日〜11日に開催される第2戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』はレース時間も短くなることから、スプリント寄りのレース展開が予想される。テクニカルコースのスポーツランドSUGOでバンテージGT4はどんな走りを見せてくれるだろうか。
