スーパー耐久マシンフォーカス:ドライビングスキルを要求するGT4マシン。KTMクロスボウGT4
そのスタイリングからボディ下面からもダウンフォースが出ているのではと感じさせるクロスボウGT4だが、車高が高いこともあり、地面効果は少ない。
リヤウイングもスポイラーとしての役割は発揮しつつも、大きくダウンフォースを生じさせることもないという。
ほかにはないデザインが魅力であり、最大の特徴でもあるクロスボウGT4だが、そのフロントデザインゆえに空気だまりが発生し、抵抗となっているという。
「クロスボウGT4は元々の抵抗が大きいので、かなりスリップストリームが効きます。富士スピードウェイのストレートを単独で走って230〜240km/hしか出なくても、スリップに入るだけでいきなり10km/hとか上がります」
富士のようなロングストレートのあるサーキットでは、特に前方の車両のスリップに入るか否かでかなりタイムが変わってくる。予選で上位グリッドを狙う上で、トウを得ることは必須となるだろう。
これまでに取り上げたGT4マシン同様、クロスボウGT4のエンジン、そしてミッションのマイレージは長い。GT4では市販車のミッションを流用するケースが多いが、クロスボウGT4はホリンジャー製6速シーケンシャルレーシングミッションを搭載している。
「エンジンは日本のレースであれば半年に一度オーバーホールするレベルです。ミッションに関しては1年行けますね。うちの場合、エンジンは2機ありますので、シーズン途中に変えるくらいです。耐久レースではなく、全戦スプリントレースだったらエンジンとミッションともに1シーズンはノーメンテナンスで行けます」
「基本ノーマルエンジンなので、レーシングエンジンみたいなシビアになるようなことはしなくていいし、ミッションもおそらく意図的にトルク容量が大きなものをチョイスしていると思います。だから、ミッションに関しては全く壊れたことがありません」
「信頼性の不安というのはないですね。唯一、2019年の富士24時間でエンジンがブローしたくらいです。あれはオルタネーターのベルトが飛んで、タイミングベルトの中に巻き込んでバルブタッチして壊れました。基本的に故障に対する不安は、ほぼありません」と渡邊氏は語った。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、全5戦での開催となった2020年シーズンのピレリスーパー耐久シリーズでは、KTMカーズジャパンのケーズフロンティア SYNTIUM KTMは2度の3位表彰台を獲得も、2019年の第4戦もてぎに続くクラス優勝獲得とはならず、シリーズランキング6位で終えることとなった。
KTMクロスボウGT4というクルマは、独特なスタイリングに加え、乗り手にスキルを要求する特性を持ったGT4らしくないGT4マシンであったと感じるとともに、GT4というカテゴリーの難しさを痛感させる一台ともなった。