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投稿日: 2023.06.15 15:56
更新日: 2023.06.15 15:57

apr 2023スーパー耐久第2戦富士24時間 レースレポート


国内レース他 | apr 2023スーパー耐久第2戦富士24時間 レースレポート

ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 第2戦
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563m
5月26日(予選)
天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:5000人
5月27〜28日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万2000人

序盤のトラブルによる遅れを取り返せず。しかし5位完走でポイント積み重ね、今後に期待を!

 2023年、全7戦で争われるスーパー耐久シリーズに、aprは引き続きFIA-GT3によって争われるST-Xクラスに臨む。4シーズン目となるDENSO LEXUS RC F GT3をドライブするのは、新たに加わった永井宏明選手、そして小高一斗選手と嵯峨宏紀選手だ。

 第2戦はシリーズの大一番であり、6回目となるNAPAC SUPER TEC富士24時間レースとして開催される。助っ人として起用されるのは、永井秀貴と中山雄一、そして上村優太と、もう、お馴染みのドライバーたちだ。DENSO LEXUS RC F GT3で最初の挑戦となった、2020年こそ2位となったものの、その後の2年間は表彰台に上がれず。鬼門としないためにも、今年こそ確固とした結果を残したい。

 鈴鹿サーキットで行われた開幕戦では、一時トップを走行し、マシンのトラブルを起因とするペナルティを2回も受けながら3位でゴール。ポテンシャルの向上は確実に証明されただけに、ドライバー6人、力を合わせて長丁場を戦っていく。

公式予選 5月26日(土)12:00〜

 本来ならコントロールタイヤは、引き続きハンコックから供給されるはずだったが、3月に発生した工場の大規模な火災によって、レース用タイヤの生産が不可能な状態に。一時はスーパー耐久もシリーズ継続が危ぶまれたものの、ブリヂストンから救いの手が差し伸べられ、2024年からの契約が発表。また、いち早く第2戦からドライタイヤは、ブリヂストンから供給されることになった(第3戦以降はウェットタイヤも)。スーパーGTでは31号車がブリヂストンのタイヤを装着し、ライバルチームより特性を熟知しているaprではあるが、車両も違う上に、スペックも異なっていてもおかしくはない。より性能を引き出すため、水曜日から走行を開始。合わせ込みを入念に行っていく。最終的に1分41秒台で、コンスタントに周回できるまでに詰められた。

 金曜日の昼から予選が開始。Aドライバー予選に臨んだ永井宏明選手は、入念にウォームアップを行ってからアタックし、まずは計測3周目に1分41秒866を記す。そこからさらに縮めていきたいところだが、乗りやすいとは言い難いセットに絞り出しが効かず。2周後に1分41秒822をマークするのが精いっぱいで、3番手に甘んじてしまう。続いてBドライバー予選に挑んだ小高選手も、上位が1分39秒台に入れたのに対し、計測2周目で出してきた1分40秒243がベストで、5番手に甘んじてしまう。それでも合算タイムでは3番手だったのは、永井宏明選手のトップとの差が1秒に満たなかったから。

 永井宏明選手と小高選手のインフォメーションを受け、セッティングをアジャストした後、Cドライバー予選では嵯峨選手が1分42秒400、Dドライバー予選では永井秀貴選手が1分43秒534、そしてE・Fドライバーフリー走行では中山選手が1分42秒976、上村選手が1分42秒711を、それぞれユーズドタイヤで記録し、最終チェックを完了させていた。

永井宏明選手

「低めの内圧で行っていたので、今回はウォームアップを多めに行きました。新しいタイヤは扱いやすくて問題はないんですけど、クルマがちょっと運転しにくくなっていて。予選は失敗しちゃって、いいタイムは出せませんでしたが、決勝に向けて、みんなで淡々とペースが刻めるように、クルマを作り込んでいこうと思っています。ミスなく、トラブルなく、24時間の長丁場を走りきれるように行きたいと思います」

小高一斗選手

「僕や永井選手が乗ったとき、クルマはすごくオーバーステアで、一発のタイムもまとめきれなかったと言う、悔しい予選でした。24時間レースということで、練習から決勝セット中心にやってきて、予選で初めて燃料軽くして走っても、そういうセットは試していなかったので、仕方ないですね。それでも永井選手のおかげで、3番手でスタートできるので、決勝に向けてやってきたクルマ作りが、明日に反映できればいいなと思います。タイヤも変わって楽しみになって、楽しくなければやっていられないので、24時間レースは希望を持って頑張ります」

嵯峨宏紀選手

「今回は長いレースなので予選より決勝に向けて、コンスタントに走るというのをコンセプトにセットアップしてきました。たくさん台数がいるなかで、かき分けて走らなければならない、ST-Xの特性を受けて進めましたが、そういうセットであると、一発のタイムを出す上でピーキーさが出たりします。それを踏まえた上で予選は3番手、2列目で十分なので、流れは悪くないと思いますが、レースはどういう展開になるか、正直蓋を開けてみないと分かりません。タイヤも今回から変わっているから、どれぐらい保つのか含めて……。でも、GTでブリヂストンを使っているマージンは少なからずありますね。使い方、保たせ方はGTと似通った部分もあります。とりあえず、明日の決勝に向けて、やれるだけのことはやったという印象はあります」

永井秀貴選手

「やっぱり台数も多いので、次のプロの方につなぎたいので、しっかりまわりを見ながら、自分のベストを出せるように頑張っていきたいと思っています。その後のセット変更もあり予選のタイヤがユーズドだった割には、いいタイムも出ていますし、そういった意味でコントロールしやすいセットにしてくれましたので、決勝もこのままいけば楽しみです」

中山雄一選手

「この2年間でクルマの進化をすごく感じます。S耐に出て、毎戦このクルマを早くしようというのがすごく感じられて、昔僕が乗っていたRC Fとはすごく違う乗り味が感じられて、そういった部分での変化はすごく感じます。チームのメンバーも考え得る中では最強だと思うので、24時間、自信を持メンバーで前に2位を獲っていますので、今回もいい順位を狙えるって戦えるマテリアルが揃っていると思います」

上村優太選手

「RC Fで24時間は4年目ですね。僕は夜勤部隊なので、とにかくつなぐことを意識して、壊さないことも心がけて走ります。もう淡々と行くのみです」

金曽裕人監督

「悪くないですよ。決勝セットばかりやっていたから、予選はね、本当は『もっと予選セット試せば良かったね』というのもあって、ぶっつけに近い状態で永井選手と小高に行ってもらったら、『違うし』という方向に行ったというのが結論。でも、ロングランであるとか、安定して走らせるという方向に関しては、今回のテーマは『楽に走れて、アベレージ高く走れて』。簡単に言うと、コーナリングよりも最高速を伸ばすことを主にやっています。そこでレース巧者で行きたい。今回から使うブリヂストンのタイヤは最高です。すごく使いやすいし、たぶん僕らがいちばんノウハウ持っているはずだから、そこはアドバンテージ。タイヤをきっちり使い切って、無理させずに前に行ける方向のセットアップを、ずっとやってきたというのは、そういう意味。決勝が楽しみです。乞うご期待!」

決勝レース 5月27日(日)15:00〜

 24時間レースが開催されるようになって、富士スピードウェイをレース観戦の場所ではなく、さまざまな楽しみの場所とするのが、6回目ともなると完全に定着した印象がある。それがコースサイドの観戦席に設けられるテントだ。その効果は他のレースにも波及しつつあるが、24時間レースでは特に絢爛だ。このレースウイークは天気にも恵まれそうとあって、誰もがエンジョイできるに違いない。

 さまざまなセレモニーを経て、土曜日の15時にレースは開始。今回、DENSO LEXUS RC F GT3のスターティングドライバーを務めるのは嵯峨選手だ。3番手からスタートを切り、1周目こそポジションキープながら、2周目のヘアピンで2番手に浮上。以降、トップから遅れることなく周回を重ねていく。順調そのもの……に見えたが、実のところ、スタートから40分も絶たず、エンジンがミスファイアを起こし、本来のパフォーマンスを発揮できなくなっていたのだ。

 1時間14分経過した42周目、最初のルーティンピットを行って、バトンを永井宏明選手に託すも、症状はさらに悪化。やむなく62周目に緊急ピットインとし、早々に義務づけられた10分間のメンテナンスタイムを敢行することに。15分ほどで問題が出た部品を交換し対処できたのは何よりだったが、トップからは8周の遅れをとってしまう。しかし、先はまだまだ長い。

 108周目からは小高選手が走行し、ナイトセッションに突入した152周目からは上村選手が走行。このころには総合での順位も、ST-Xクラス勢と並ぶように。200周目からは中山選手、そして246周目からは再び小高選手、285周目からは上村選手、330周目からは中山選手と、若手でバトンはつながれていくも、先に築かれたギャップはなかなか埋まらない。377周目からは小高選手がダブルスティントに突入する。

 ここまでセーフティカーが3回入り、その3回目は1時間半の赤旗中断を伴うほどで、ドライバーが大事に至らずに済んだのは不幸中の幸いだったが、なぜかST-Xクラス勢にアクシデントは発生せず。それどころか、SC中にメンテナンスタイムを行われては、挽回の機会も奪われたも同然。

 あたりもすっかり明るくなった436周目からは上村選手が、482周目からは中山選手が走行。そして18時間経過し、夜のうちにしっかり休息を取った嵯峨選手が528周目から走り、次のスティントを永井宏明選手に託すはずだった。しかし、嵯峨選手が戻ってきたのは549周目と早い! 左リヤの足回りにトラブルが発生し、修復を余儀なくされたからだ。ここで30分近いロスを抱えてしまう。

 そこでチームは作戦を大幅に変更。まず完走第一とし、そのうえで次回以降のレース、そして来年の富士24時間に向けて、テストを行おうと。時間をかけてもしっかりリフレッシュされたDENSO LEXUS RC F GT3は、永井宏明選手がWスティントを実施しても、安定の走りを見せるようになっていただけに。604周目からは嵯峨選手が何度もピットストップを繰り返し、そのつどブレーキ周りの新しいパーツが導入された。

 ラスト1時間半は、永井秀貴選手が担当。途中給油だけを行い、あとはチェッカーを目指すまで。コース脇にはタイヤカスが散乱し、コンディションとしては最も悪い状況ではあるが、しっかり最後まで走り抜き、DENSO LEXUS RC F GT3は690周を走破。5位という結果を得た。

 しかし、これが極めて重要な意義を持つ。今回、第1戦の1位、2位のチームが欠場したことで、ポイントスタンディングは超接戦に。aprはランキング5位ではあるのだが、トップとの差は15ポイントでしかない。まだ5戦を残しているだけに、チャンピオンシップも有視界にある。シリーズ第3戦は、7月8〜9日にスポーツランドSUGOで、2グループ開催の3時間レースとして競われる。まずはこの一戦で着実に差を詰め、最後に笑いたいものだ。

永井宏明選手

「エンジンが失火してパワーが出ない初めてのトラブルも出ましたし、速さは有ったのに挽回のタイミングもなく、うまいこといかない週末になっちゃいましたけど、なんとか完走して5位のポイントが獲れたのは収穫。次に向けてマシンも、もう一段先の仕上げ方をしたいと思っています。今回しっかり重ねたデータを今後に活かしたいです」

小高一斗選手

「僕が乗る前から、すでにトラブルが発生していて、そこからのレースペースも、まだ夜の路面温度が低い時は速くてバランスも良かったが、明るくなって暖かくなって路面温度が上昇してくるとバランスが相当悪かったです。永井選手にドライブしてもらうには、ちょっと失礼なクルマになっていました。速いジェントルマンドライバーなので、しっかり力を引き出せるような車を作って、永井選手の力を存分にお借りして、ちゃんと今年中に勝たないといけないと思うし、頑張ります」

嵯峨宏紀選手

「スタートして40分でトラブルが発生し、僕のときは騙し騙し走っていましたが、永井選手に代わって症状がひどくなって緊急ピット。そこでついてしまった差が、結局24時間かけても今回、ST-Xに大きな波乱がなかったことで、追いつくことができず、それがすべてでした。毎年、同じことを言っていますが、何事もなく終わらせることが、この大会では重要なのに毎年何か起きている状況なので、う〜ん。ちょっと、如何ともし難いというか。走行距離稼いで、データは取れましたけど、残念な結果だったと思います」

永井秀貴選手

「最後のスティントを担当させていただきました。タイヤカスもすごく残っていたので、かなり厳しかったんですけど、みんなが繋いで来てくれたので、なんとか完走と思って、そこだけに集中して、あんまりタイムを気にせず走っていました。レースの初めの方でトラブルがあり、順位が落ちてしまい早々に戦線離脱でしたが、なんとか完走だけはしようということだったので、チェッカーを受けられたのは何よりで……。エンジニアやメカニックの方々が寝ずに頑張ってくれたので、完走できて良かったと思います。うまくつなげられたことを、嬉しく思っています」

中山雄一選手

「スピードもなかったので、最初から最後までプッシュするしかなくって、そうすると足回りとかブレーキに負担がかかってきて、そういった意味でトラブルを誘発したりして……。他と比べてスピードがなかったのが、原因だったかな、と思います。ただ、この24時間は挑戦し続けていきたいですし、そのなかで良い結果が残せたら嬉しいですけど、ライバルも手強かったし、今回は流れも悪かったですね」

上村優太選手

「夜間をとにかく、下位ではありましたが、自分なりにプッシュして走りました。結果的に、順位はトラブル直後の5位から変化は無かったですけど、チーム一丸となって諦めることなく走れたので、良かったかなと思います、最後は。永井兄弟でRACEを楽しんで頂けたので、僕的にはOKかなと思っています」

金曽裕人監督

「序盤早々のエンジン失火のトラブルで、この24時間の“絵”が見えてしまって、それを取り返そうと、あの手、この手を考えトライしましたが、長時間のSCの間に他チームがメンテナンスタイムを使ってしまったので、もう深夜の時点で、順位や流れは完全に見えてしまいました。レース前には必勝態勢と言っていましたが、初トライで入れてきたブレーキシステムやパッドが最終的にどういう摩耗をするかも分からなくて、うまく使用サイクルを構築させられなかったのも敗因。なので、今日の午前終わりぐらいからは、来年の24時間に向けブレーキテストをしていました。『今年中に優勝するぞ、来年の24時間を獲るぞ!』とテーマを切り替えました。作戦としても、夜のうちに若いドライバーにガンガン行かせましたが、序盤で挫いた部分がなかなか取り返せなかったですね。メンテナンスタイムでフォローできていれば、全部流れは変わっていたでしょう。残念ですが次に向けては、前向きです」

2023スーパー耐久第2戦富士 DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一/上村優太)
2023スーパー耐久第2戦富士 DENSO LEXUS RC F GT3(永井宏明/小高一斗/嵯峨宏紀/永井秀貴/中山雄一/上村優太)


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