更新日: 2023.07.10 18:41
エンツォ・トゥルーリ 2023スーパーフォーミュラ・ライツ第3大会 レースレポート
エンツォ・トゥルーリ選手がSFL鈴鹿大会で魅せた激しいバトルとオーバーテイク
今シーズンよりモビリティ中京 TOM’S 320を駆り、伝統あるTOM’Sより全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦しておりますエンツォ・トゥルーリ(イタリア出身・18歳)が、7月12日に三重県・鈴鹿サーキットにて開催された全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権Round7/8/9に参戦し、第7戦で7位、第8戦で6位、そして第9戦で4位を獲得しました。
エンツォ・トゥルーリは、元F1ドライバーであり、モナコGPのウイナーでもあるヤルノ・トゥルーリ氏の長男で、2021年にカートからFIA-F4にステップアップし、UAE-F4シリーズでチャンピオンを獲得。2022年にはFIA-F3とユーロフォーミュラ・オープン選手権で活躍し、本年度から全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権を戦いの場に選んだ18歳になったばかりのレーシングドライバーです。
オートポリス大会、スポーツランドSUGO大会では、専有走行日が雨、予選、決勝が晴れというルーキーにとっては厳しい状況での戦いでしたが、エンツォ・トゥルーリは着実に完走を重ね、そして第6戦では2位表彰台を獲得しました。
そして迎えた鈴鹿大会は、6月29日木曜日の専有走行はドライ路面、6月30日金曜日は午前がドライ、午後がウエットという状況でした。エンツォ・トゥルーリは、2日目午前の専有走行で1分54秒520を刻み、第3セッションのトップタイムをマークしました。ウエット路面でも慎重にセットアップを進め、自信を持って土曜日の予選を迎えました。しかし路面温度が大きく変化した第7戦予選では、エンツォ・トゥルーリは5周目に1分54秒450をマークしたものの7番手。続く第8戦予選では3周目に1分54秒016をマークして4番手グリッドを得ることとなりました。
土曜日は午後から天候が崩れ始め、午後4時40分にフォーメーションラップがスタートした第7戦決勝レースは、タイヤの判断が難しい路面コンディションとなりました。後方3台がウエットタイヤを装着し、それ以外は全車スリックタイヤを選択。しかしスタート直後のS字区間で2台が接触し、いきなりセーフティカーが出動しました。その間にピットでウエットタイヤに交換したマシンと、そのままスリックタイヤでステイアウトする選手たちが混在するなか、エンツォ・トゥルーリはスリックタイヤでそのまま走り続けました。
スタートでひとつポジションを上げたエンツォ・トゥルーリでしたが、レース再開後にはウエットタイヤに交換した選手たちのペースが勝り、なんとか抑えようとするものの5周目には7番手にドロップ。しかしレース後半にはウエットタイヤを持たせきれなかったドライバーを再び抜き去り、5位でチェッカー。2ポイントを加算することができました。
7月2日日曜日は快晴。第8戦を4番手グリッドからスタートしたエンツォ・トゥルーリでしたが、第1コーナーでアウト側から鈴鹿サーキット特有のライン取りでオーバーテイクを仕掛けてきた2台にパスされてしまい、7番手でコントロールラインを通過。厳しい戦いとなりましたが、粘り強い走りを見せて最後まで走り切り、7位完走でレースを終えました。
第9戦は、第7戦の結果でグリッドが決まるため、5番手からのスタートです。スタートは悪くなかったのですが、イン側から他のドライバーに押し出されてしまい、後方から1台にパスされ6番手で1周目を通過。しかし諦めることなく前を行くマシンを追い続け、8周目の第1コーナーで1台をパス。さらに9周目のシケインでもう1台をパスし、見事4位でチェッカーを受けました。
■エンツォ・トゥルーリのコメント
「僕にとっては、厳しい週末となりました。それでも予選2回目の走りと、第9戦の走りには満足しています。今回は専有走行がドライ路面で走れたので、週末に向けていろいろなセッティングを試すことができました。予選1回目はタイヤの一番美味しい状況を使い切れず、ダウンフォースの選択も多少間違ってしまったので、タイムが伸ばせませんでした。予選2回目はそれを修正し、タイヤの温め方も変えて、トップドライバーと遜色ないタイムを出すことができました」
「最初のレースは雨のなかで、タイヤ戦略を間違えたと思います。自分たちはスリックタイヤでステイアウトを選択しましたが、結果から見れば、自分の後方でレインタイヤに交換したドライバーが何人かいたし、そのなかのひとりが優勝したわけですから、彼らが正しかったのでしょう」
「第8戦は4番手スタートだったのですが、第1コーナーのライン取りをミスしたせいで、2台にアウト側から抜かれてしまいました。それでも前のマシンに食らいついていったのですが、前のマシンの直後につけるとダウンフォースが抜けてアンダーステアが酷くなってしまい、抜ききれないまま7位に終わりました」
「第9戦に向けて、エンジニアと相談して多少セットアップを修正し、5番手グリッドからスタートしました。しかし第1コーナーで1台のマシンに押し出されてしまい、その間に1台に抜かれてしまいました。しかし自分たちのペースはとても良かったので、リカバーすることができました。マシンのフィーリングは素晴らしく、満足できましたし、次の富士に向けての自信につながりました」
「今週末はTOM’Sチームにとっては素晴らしい週末だったと思いますし、チームメイトの平良響選手はドライバーズポイントランキングで首位となり、チームランキングもリカバーできたからです。最後になりますが、土曜日にスパ・フランコルシャンでの事故で亡くなったディラーノ・ファン・ト・ホフ選手に追悼の意を捧げます。すごく悲しいニュースでした。レーシングカートやFIA-F4 UAEで一緒に戦い、いつもレースで1位と2位を争っていた仲間ですし、本当に最高のドライバーでした。モータースポーツにとって大変悲しい出来事です。2度と起こって欲しくない事故でした」
■吉武聡チーフエンジニアのコメント
「今回は木曜日からロングランを中心のプログラムとし、走行距離を稼ぎました。金曜日の午前中にセットアップを煮詰めトップタイムをマークすることができましたが、予選1回目ではタイヤの一番美味しいところに合わせきれなかったですね。予選2回目はタイムアップし、満足できる内容だったと思います」
「第7戦決勝は、厳しいコンディションのなか、ドライタイヤを装着したドライバーのなかではトップタイムでしたから、1周目に抜かれた以外はOKでした。第8戦はスタートでやられたのですが、自らオーバーテイクしてきたのでそこは評価できますね。第9戦もスタートでポジションを落としましたが、レースのペースは速かった。オーバーテイクの技術も評価していますし、後方から迫ってきていた木村偉織選手からのプレッシャーにも耐え抜きました。次の富士からはドライタイヤもグリップの高いヨコハマタイヤになるので、彼にとっては良い条件が整うと思っています」
■山田淳チーム監督のコメント
「ドライビングに波があるのは、経験が浅く、まだタイヤに対する理解が不足しているからだと思います。次戦からヨコハマタイヤに変更されるので、今の状況を打破できると期待しています。レースはうまいですね。スタートそのものも悪くはないですし、雨のなか、スリックタイヤでは誰よりも速かった。しっかりとオーバーテイクもしてくるので、次の富士は期待しています」