更新日: 2017.03.29 16:31
【F1オーストラリアGP無線レビュー】嘆き、焦るハミルトンと2度のプラン変更
フェルスタッペンもいずれピットインするだろうと踏んでいたメルセデス陣営だったが、フェルスタッペンは思いのほか長く引っ張り、首位ベッテルより1秒近く遅いペースで走る彼に付き合わされることになってしまった。
フェラーリ(以下、FER)「タイヤはとてもヘルシーだ。このままプッシュし続けろ。落ち着いていけ」
逆に首位ベッテルはウルトラソフトタイヤを長く保たせることができ、レースエンジニアのリカルド・アダミが冷静にそう伝える。
HAM「コイツを抜ける場所なんてないよ、どうしようもない!」
MER「OK、プレッシャーを掛け続けろ」
ハミルトンが苦しんでいる頃、ベッテルは23周目にピットインを行ない、彼らの目の前でコースに復帰し、見事に“オーバーカット”を成功させて首位を奪い取ってみせた。
25周目、フェルスタッペンがピットインしてようやく前が開けたハミルトンに対し、メルセデスは「OK、我々は“プランB”への変更を検討している」と、つまり2ストップ作戦の可能性を伝える。一方ベッテルは安定したペースでレースをコントロールしており、チームからは「まだ先は長いから、落ち着いていけ」とそのままゴールへマシンを運ぶだけだという指示が飛ぶ。
本来であれば22周目まで引っ張ってスーパーソフトに換えるのがセオリーであるところ、17周目にピットインしてしまい、残り40周をソフトタイヤで走ることになったハミルトンだったが、無理をしてチームメイトのバルテリ・ボッタスに2位を奪われるよりも、首位追撃を諦めることでなんとか1ストップのままで走り切り2位を守る作戦に切り替えることにした。
MER「タイヤは落ち着いてきている。最後に少し苦しむかもしれないがプランAのままでいこう」
HAM「僕のタイヤは周りと較べてどうなのか教えてくれ」
MER「バルテリ(ボッタス)より8周、ベッテルより6周古い」
ハミルトンは「かなり早い段階で追いかけるのは辞めて2位をキープすることにしたんだ。そうでなければ2位を失う可能性さえあったんだからね。ダメージリミテーションのレースだった」と明かす。こうしてベッテルの開幕優勝は決まったのだ。
ピットストップまでは大接戦のレースだった。フェルスタッペンに捕まらなければ、ハミルトンが勝っていたか? そうかもしれないが、メルセデスがフェルスタッペンに引っかかることを承知の上で17周目という早い段階でピットインさせなければならなかったのは、自分たちのペースが伸びず、背後にベッテルがピタリと付けていたからだ。
「彼の方が速いコーナーもあったし、逆に僕の方が追い付けるコーナーもあった。彼がトラフィックに捕まったという幸運もあったけど、プッシュしてプレッシャーを掛け彼に早めのピットストップをさせたのは僕らだ。もし15周走ったところで大きなギャップがあれば、彼は(タイヤが厳しくても)そのままステイアウトしてレースをコントロールし、前が空いたところを狙ってピットインしていただろうからね。僕らがとても良いレースをやったということなんだ」
ベッテルがそう語るように、フェラーリとベッテルは勝つべくして勝ち、メルセデスとハミルトンは負けるべくして負けたのだ。