さらにポストシフト・オシレーションということは、シフトチェンジ直後に起きていることからも、ギヤボックスの振動が共振の主因になっている可能性が高い。長谷川総責任者も「シフトアップのときが特に大きい」と語っている。
現在のF1のギヤボックスは、シームレスシフトを使用している。通常の変速プロセスは前段アウトギヤ→ニュートラル→次段インギヤだが、シームレスシフトは次段インギヤ→前段アウトギヤとすることでアップシフト時の伝達トルク損失時間ゼロというシステムで、1ラップあたり0.4秒短縮の効果があるという。これをF1界で初めて導入したのが、じつは2005年のホンダで、BARにエンジンとともに供給していた時代の話である。
つまり、長谷川総責任者が言う「ポストシフト・オシレーション」というのは、シームレスシフトのシフトアップの「ガツン、ガツン」という振動が、ホンダのPUの振動と共振して発生しているということになる。
もちろん、共振であるから、ホンダ側のマッピングを調整することでも、振動はいくらかは和らげることは可能だ。しかし、振動の元がシームレス・シフトにあるとしたら、マクラーレンのギヤボックスが改善されない限り、根本的な解決は得られないだろう。
オーストラリアのパドックでは、シーズン中にマクラーレンがホンダに違約金を払って契約を解消すると囁かれていた。そして、その場合、フェラーリからギヤボックスの供給を受けているザウバーに、マクラーレンが代わってギヤボックスを供給するという。
この噂が本当だとしたら、ホンダにスイッチするザウバーでも、共振という問題は起きることになる。そのことをザウバーはどれくらい把握しているのだろうか。