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──今、あらためて振り返ると、006の最大の長所はどこにあったのでしょうか。

JB「あのマシンはどんな種類のサーキットでも速い、オールラウンダーだったと思う。どこへ行っても競争力があり、パフォーマンスが一貫していて信頼性も高かった。2004年はフェラーリの戦闘力が頭ひとつ抜けている感じだったから、006は最速のマシンではなかった。けれども、それほど大きく離されていたわけではなく、数少ない例外的な状況ではそれを利用して彼らと戦うこともできた。ついでに言えば、ほぼ唯一の弱点はスタートにあった。琢磨と僕は、レースのスタートでポジションを下げることがかなり多くて、本当ならする必要のない苦労を強いられた」

──ホンダは2004年に前年型よりずっと軽く信頼性も高いうえに、パワフルなRA004Eエンジンを投入しました。ホンダの仕事ぶりに対するあなたの考えは、あのエンジンによって変わりましたか。

JB「いや、彼らにどれほどの能力があるのかは、以前からよく知っていた。1980年代から90年代にかけて、ホンダはほぼ10年間にわたってF1を支配していたからね。彼らがF1に、ただ参加するだけのような姿勢で復帰するはずがなかった。復帰後の最初の2~3年は学習に費やしたものの、その後は確実に進歩して、2004年のエンジンはまさにトップクラスだった。実際、僕がエンジントラブルでレースを完走できなかったのは、ブラジルGPでの一度だけだ。他の2回のリタイアは、他車との接触とギヤボックスのトラブルが原因だった。ホンダは本当に素晴らしい仕事をしていたと思うよ」

──BARで充分に満足しているように見えながら、あなたは一時、2005年にウイリアムズへ移籍しようとしました。結局、BARに残留することになりましたが、いったい何が起きていたのでしょうか。

JB「それもはるか昔のことで、詳しいことはよく覚えていない。というか、思い出したくないのかもしれないな。とりあえず、当時の僕はあまり賢明ではなくて、いろいろと思い違いをしていたと言っておこうか」

JB「いずれにせよ、チームの誰かとの個人的な諍いのようなことは一切なかった。それは、デビッド(・リチャーズ)も含めてね。結局のところ、すべては最善のかたちで収まった。僕はホンダがチームを所有していた時期を通じ、さらにはブラウンGPの時代まで在籍し、彼らとともに2009年のドライバーズ&コンストラクターズの両タイトルを勝ち獲った。マクラーレンへ移籍したのは、その翌年のことだ。言ってみれば、そうしてきっちり始末をつけたわけだよ(笑)」

ジェンソン・バトンが輝いた、2004年コンストラクターズ選手権2位。 大躍進のBAR『006・ホンダ』を語る
2004年F1第18戦ブラジルGP 2004年シーズンを終えたBARチーム

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『GP Car Story Vol.48 BAR006』では、今回お届けしたバトンのインタビュー以外にも読みどころ満載。日本のファンの夢を一身に背負い戦った佐藤琢磨のインタビューはもちろん、006開発の中枢を担ったジェフ・ウイリス、ウイレム・トーエ、バトンをもっとも側で見ていた担当エンジニアのアンドリュー・ショブリン。そして、現ハースF1のチーム代表を務める小松礼雄が、駆け出しの若きエンジニア時代に見ていたBARチームの実情のほか、006の魅力的なスピードの生み出した圧倒的パワーを誇ったホンダV10エンジンの開発・運用に携わった田辺豊治、櫻原一雄、吉野誠の3人にも話を聞いている。

 デビッド・リチャーズ、オットマー・サフナウアー、BAR、ホンダ両者の運営面を知るふたりの貴重なインタビューも掲載。2004年期の進撃、そして2005年以降の失速、その真相のすべてをこの1冊で知ることができるだろう。

『GP Car Story Vol.48 BAR006』は現在発売中。全国書店やインターネット通販サイトにて購入可能だ。内容の詳細は三栄オンラインサイト(https://shop.san-ei-corp.co.jp/magazine/detail.php?pid=13293)まで。

未来のF1王者ジェンソン・バトン、まだ何者でもなかった彼が輝いた瞬間。コンストラクターズ2位の大躍進を見せた『BAR006・ホンダ』を語る
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