決勝ではダンプコンディションのなか、ターン6という左コーナーでカルロス・サインツ(フェラーリ)、ペレスが単独スピンを喫し、サインツのスピンではアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)も巻き添えとなり、ターン6での2件のアクシデントで3台がリタイアとなりました。
これはターン6が乾き切らなかったことが理由ですね。タイトな左コーナーのターン6に入る際は、右側からターンインしますけど、ちょうど2件のアクシデントが続いたレース後半の時点で、ターン6はイン側(左側)が乾きつつあるも、アウト側(右側)がまだ濡れていました。
ターン4〜5の左、右コーナーを抜けた先のターン6は、ブラインドから急にコーナーが現れるイメージで見えづらく掴みにくいです。かつ、理想的なラインを取ろうとすると、右側がまだ濡れている部分に乗ってしまうので、アクシデントが続いたという印象です。ドライバーにとっては走行ラインが1本、ラインを逃せば止まらない、曲がらないという、見た目以上に難しいコーナーだったりします。
さて、今回のカナダGPのレースウイークに、裕毅とRBの契約延長が発表されました。6月という早めのタイミングでの来季契約決定は、日本のファンにとっても非常に明るいニュースでした。本人的にもこの時期から来季が決まっていると、変なプレッシャーを感じることなくレースに集中できますので、すごくポジティブですね。
今回のカナダGP、裕毅とRBはフリー走行ではクルマをまとめきれずに苦しんでいる印象でしたが、予選までにはきっちりと調子を取り戻し、いつもどおりの走りを見せて予選でもQ3進出を果たしました。決勝もいい走りをしていたのですけども、少しブレーキに問題もあったようで、終盤にターン8でコースオフしました。

ジル・ビルヌーブ・サーキットはダウンフォースが少ない中、高速からブレーキでしっかりと止めなければならなず、ブレーキングが非常に難しく、厳しいコースでもあります。本人もミスだったとコメントしていましたけど、前にクルマがいたことでダウンフォースが少し抜けた状態でのブレーキングだったなど、さまざまな要因が重なった結果のコースオフだったように思います。
さらなる上のチャンスを伺うためにも、裕毅には今回の早いタイミングでの契約延長を活かし、結果に繋げてほしいです。あの1ミスはもったいないですけど、それ以外ではほぼ完璧な走りを見せていました。大切なことは同じようなミスを2回続けてやらないことですね。
次戦はカタロニア・サーキットでのスペインGPです。各車の勢力図がはっきりする場ということもあり、個人的にはかなり楽しみなレースです。今季すでに王者レッドブルと、それを追うライバル勢のギャップが縮まりを見せていますが、このギャップの縮まりがサーキット特性に起因するものなのか、マシンアップデートによるものなのかが如実に見えてくるのがカタロニア・サーキットでしょう。
本当の意味での勢力図を知ることができるグランプリなだけに、とても楽しみですね。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24