案の定メルセデス勢はやりあい、それを見てとるとベッテルはハミルトンのミラーの視界の外、コース左サイドでぎりぎりブレーキング。相手の見えにくい位置からズバッと入り込み、壁を崩すのに成功。これがレースというものだ。
1位を守ったボッタスのペースが上がらない。2周目を過ぎるころからややスライド量が増え、トラクションも鈍い。先頭クリーンエアを走るのに後方乱流を浴びる2位ベッテルのほうが安定している。しばしばラインをずらし、攻撃姿勢をとるほどだ。
後のボッタスの無線会話によって「タイヤ内圧の設定に問題がある」ことが判明。今回の指定内圧は前輪21.5psi、後輪20.5psi、それが高くなっていてハンドリングに影響していた。先頭ボッタスは苦しそうで、5位ダニエル・リカルドまでがトップ集団を形成、昨年には絶対見られなかった展開だ。
ここで言えるのは、もしベッテルが1コーナーでハミルトンをかわしていなかったら、メルセデス陣営はすぐオーダーを入れ替え、ハミルトンを前に出して逃がしボッタスを後ろに下げて抑えさせただろう。
スタートで2位を奪ったことが必要条件。そして10周目にアンダーカット戦法を決断したのが十分条件。勝機をつかみ、逃さない機動力を今年のフェラーリに強く感じる。
一方、メルセデス勢はこの接戦展開に浮足立った。13周目、SC導入の際の混乱だ。ハミルトンはピットレーン内でほとんど止まるようにして背後のリカルドをかく乱、とっさの「黒い判断」に5秒タイム・ペナルティーが下る。

さらに先に入ったボッタス6秒2、ハミルトン6秒4、このタイムロスはホイールガンの問題だった。こうした混乱を見せられるとこの3シーズンの間、複数チームと接戦展開してこなかった彼らだけに、ライバルからプレッシャーを受けたときにどこか綻びを感じる。もう絶対王者としてではなく、新たに挑戦者として立ち向かう気構えが必要なのではないか。
――前に書いたようにバーレーン勝利者は75%、勝利チームは90%以上の確率でチャンピオンとなっている。ベッテルとフェラーリが今年最初の“決戦”で首位奪還。「目覚めたイタリア」がここから走り出すか、序盤戦は今世紀に初めて見るフェラーリ対メルセデスで進んでいく。
