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投稿日: 2024.08.29 21:17
更新日: 2024.09.01 21:32

ノリスとフェルスタッペンのスピードセンスの競演。来季新人の積極起用と繊細さ【中野信治のF1分析/第15戦】


F1 | ノリスとフェルスタッペンのスピードセンスの競演。来季新人の積極起用と繊細さ【中野信治のF1分析/第15戦】

 オランダGPの前に、アルピーヌが来季ジャック・ドゥーハンを起用すると発表しました。2023年FIA F2の走りなどを振り返ると、ドゥーハンはメンタルが強く、アグレッシブかつマシンコントロールの上手いドライバーだという印象です。

 一方で私は、ドライビングの繊細さという部分はどうなのかという部分は気になります。というのも、オランダGPを最後にウイリアムズのレギュラーシートから離れたローガン・サージェントも、FIA F2時代にはアグレッシブな走りを見せる勢いのあるドライバーでした。ただサージェントの場合、F1昇格後はアグレッシブすぎるところが目立ち、繊細さに欠けていたという印象を抱きました。

 F1はアグレッシブな走りだけではなく、見えない部分での繊細さが非常に重要です。繊細さに関して確固たる土台があった上でのアグレッシブさが求められるのがF1ですから、F1昇格を果たすドゥーハンがどのような走りを見せるのかは非常に楽しみです。

ジャック・ドゥーハン/ミック・ドゥーハン
2024年グッドウッド・フェスティバルでのジャック・ドゥーハンとミック・ドゥーハン

 また、今週末のイタリアGPから最終戦アブダビGPまでの9戦で、ウイリアムズはサージェントに代わり、フランコ・コラピントを起用すると発表しました。この起用にはメルセデスとの関係や政治的影響も多々あるなか、自チームの育成ドライバーであるコラピントを乗せるしか選択肢がなかったのではないかと私は思いますが、それでもコラピントにとっては大きなチャンスです。

 ウイリアムズは来季アレクサンダー・アルボンとカルロス・サインツというラインアップがすでに決まってはいるとはいえ、この9戦でコラピントがいいパフォーマンスを発揮することができれば、FIA F2ドライバーたちにとっても非常にポジティブな影響を与えると感じます。

フランコ・コラピント(ウイリアムズ)
2024年F1第16戦イタリアGP フランコ・コラピント(ウイリアムズ)

 来季はハースから参戦するオリバー・ベアマン、そして先述のドゥーハンと、新人ドライバーが複数名F1にレギュラー参戦します。若手のステップアップはF1ドライバーの新陳代謝を活性化させ、F1を目指す若いドライバーたちのモチベーション向上にも繋がりますし、F1チームの価値観の変化にも繋がるでしょう。

 そんな、F1での積極的な若手起用の流れを作ったのはマクラーレンです。今年のレースを見てもわかるとおり、ノリス、ピアストリという20代前半のコンビでコンストラクターズタイトルを狙える位置につけています。私はこの若手の積極的な起用の流れが今後のF1の主流になってくると考えています。

 また、イタリアGPでは常々F1昇格の噂が流れるアンドレア・キミ・アントネッリがフリー走行1回目に出走し、母国イタリア人ファンの前でF1公式セッションデビューを果たします。FIA F3を経験せずに参戦したFIA F2で2勝を飾ったアントネッリの今後の動向も楽しみですし、アントネッリは『若手は時間をかけて育成しないといけない』と言われてきた既存の考えや価値観、そして流れを一転させる活躍をジュニアカテゴリーで見せてくれています。

 もし、今後アントネッリがF1のレギュラーシートを掴み、F1でも結果を残すことができれば、育成に時間を要せずに結果を出すことができるというわかりやすい一例になるかもしれません。アントネッリの動向、そして来季メルセデスでジョージ・ラッセルのチームメイトとしてシートを得るドライバーは誰なのかという点には引き続き注目したいと思います。

17歳の“新星”アントネッリ昇格のうわさ煽るメルセデスF1ボス「彼のペースを疑ったことは一度もない」
ハンガリーのブダペストで2024年シーズン2勝目を飾ったアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)

 さて、今週末のイタリアGPが開催されるモンツァ・サーキットは久しぶりの大改修が行われ、ターン1〜2のシケイン(バリアンテ・レティフィーロ)のレイアウトも変更されました。とはいえ、依然として超高速サーキットであり全開率も高いというモンツァの特徴には変わりはありません。

 ダウンフォースの少ない状態で縁石を積極的に使うことが求められるため、セットアップによるクルマの特性、いい部分と悪い部分の出方が他のサーキットと大きく異なることも特徴です。これがどのチームの後押しとなるのかも楽しみですね。

 これまでストレートがあまり速くはなかったマクラーレンがモンツァでもオランダGP同様の速さを見せることができたら、シーズン終盤戦に向けて、もはや敵なしという状況となるでしょう。ストレートスピードに秀でるレッドブルにとってはここで優位性を取り戻すことができるのか、そして個人的には、同じく低ダウンフォースのベルギーGPで他を圧倒したメルセデスが、同じく低ダウンフォースのモンツァでどのような戦いを見せるか、再び他を圧倒しマクラーレンを先行することができるのかという点にも注目したいと思います。

モンツァの大改修がF1チームに与える影響。ピレリも高速化への対策を講じる/イタリアGP
2024年8月30日~9月1日にF1第16戦イタリアGPが開催されるアウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァ

【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24


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