マクラーレンの飛躍を支えた隠と陽。アブダビを走った3名の日本人と新時代F1【中野信治のF1分析/第24戦】
さて、今回のアブダビGPのフリー走行1回目(FP1)では、裕毅に代わって岩佐歩夢(RB)、平川亮(マクラーレン)が出走しました。若手日本人ドライバーがF1のフィールドでしっかりと走るチャンスが得られる時代が来たという実感もあり、個人的には少し羨ましいという思いもありつつ、大変嬉しいトピックスでした。平川選手の方は今季最速マシンのマクラーレンだったこともあり、国際映像を通して見ていた日本の若手ドライバーたちのモチベーションアップにもつながった60分間となりましたね。
日本のドライバーがF1で走るチャンスを得られることが、当たり前の時代になりましたね。それはホンダやトヨタ/GRが日本人ドライバーをF1へ送り出そうと頑張ってきた証明であると同時に、ホンダもTGRもしっかりとF1に上げられるいいドライバーを育てることができているのだと感じます。ただ乗るだけではなく、歩夢も平川選手も安定した走りでミスもなく、報道を通じて知る限りではチームからの評価も高いものだったようで嬉しく、感慨深さも感じるところです。
また、レースウイーク明けに行われたアブダビテストでは裕毅がレッドブルから参加しました。フェルスタッペンがドライバーズタイトルを獲得したレッドブルのマシンに裕毅が乗ることができたことは、流れや空気を変えるという意味でもポジティブです。テストの内容やランプラン(走行計画)がわからないので、タイムだけでは何も言えることはありません。ただ、裕毅がレッドブルに乗ったという事実は、日本のレース界に明るいニュースを届けてくれました。
また、先日ホンダのモータースポーツ体制発表があり、歩夢が2025年も全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)に参戦することが明らかにされました。歩夢にとってSF参戦2年目となるだけに、やるべきことはタイトルを獲得するということだけです。逆に言えば、それができないと先がないということでもあるでしょう。F1に進むのであれば、SFでタイトルを獲ることに集中し、圧倒的な速さ、強さを見せつける必要があります。しっかりとSFのタイトルを獲得し、今以上にチャンスを広げてほしいと考えています。
さて、2025年シーズンのF1は大きなレギュレーション変更もないことから、勢力図において劇的な変化はないでしょう。ただ、現行のレギュレーションが導入されてから3シーズンを終えたこともあり、各チームもクルマ作りが煮詰まってきています。それだけに2024年以上に優勝、そして入賞争いが激しくなりそうです。
また、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)やオリバー・ベアマン(ハース)、ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)、ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)といったフル参戦1年目を迎える彼らが、それぞれのチームメイトと比較してどのような走りを見せるかが、個人的には一番といっていいほど興味深いですね。
もし、若い彼らがチームメイトと遜色ない走り、もしくは上回る走りを見せてくれたら、F1の世代交代はさらに加速するでしょう。そうなれば若手ドライバーに巡ってくるチャンスも必然的に増えることに繋がりますので、大変楽しみです。2024年シーズンも見応えのあるシーズンでしたが、2025年もさらに見逃せないシーズンとなりそうです。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24