2024年シーズンの最後の3連戦となった第22戦ラスベガスGP&第23戦カタールGP&第24戦アブダビGPは、2つのチャンピオン決定戦の場となった。
まず、3連戦初戦のラスベガスGPで、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がドライバーズチャンピオンに輝いた。フェルスタッペンのタイトル獲得は2021年から4年連続。しかし、今年の戴冠はかなり厳しい状況だったとホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は振り返る。
「昨年は連勝を止めてはいけないというプレッシャーがありましたが、それはいいプレッシャーでした。でも、今年はライバルに迫られ、逃げるのに必死な状況だったので、精神的にきつかったです。私は夏休み前までRBのガレージで仕事していたのですが、第6戦マイアミGPの後のイモラのあたりから苦戦しているのがRBのガレージからもわかりました」
「イモラは予選で立て直して、レースでも勝つことはできましたが、あのあたりからガクンとペースが落ち始めたように思います。その後も、なんとか立て直そうと頑張っていましたが、うまく行かず、雰囲気もあまり良くなかったように見えました」
そんな矢先、パワーユニットにも問題が発生する。第9戦カナダGPのフリー走行でフェルスタッペンのパワーユニットが高電圧系トラブルに見舞われ、1基失ってしまう。
「昨年までだったら、パワーユニットを交換してグリッドペナルティを受けても、優勝争いに追いつけるだけの速さがあったので、抜きどころがあるサーキットで(5基目以降を)入れることに対して、チームからの反対はなかったんですが、今年はそんな余裕はなくなったので、できるだけ(5基目以降を)入れずに乗り切りたいという方向だったので、トラブルが出て5基目以降を入れざるを得なくなり、そのタイミングはチームとかなり長い間、話し合っていました」(折原)
その話し合いの結果、レッドブルとHRCは夏休み前の第14戦ベルギーGPで5基目を入れ、第21戦サンパウロGPで6基目を入れる決断を下した。そのサンパウロGPの予選でフェルスタッペンが赤旗が出るタイミングの影響を受けてQ2で敗退ときは、絶望的な気持ちとなったと折原GMは振り返る。しかし、雨のレースでフェルスタッペンが神業のような走りを見せ、さらに予選では不利を受けた赤旗がレースで味方するという幸運もあり、大逆転優勝。「これで(チャンピオンシップ)行けるかもしれない」と感じたと折原GMは言う。
ドライバーズチャンピオン4連覇をホンダと共に成し遂げたテクニカルディレクターのピエール・ワシェは、次のようにHRCの協力に感謝した。
「われわれの要望を理解してICEの使用温度領域を上げて走らせてくれたHRCの協力が、この結果に大きく貢献していたことは言うまでもない」
しかし、2023年まで2連覇していたコンストラクターズ選手権を2024年に制したのはレッドブルではなく、マクラーレンだった。マクラーレンのコンストラクターズチャンピオンは1998年以来、26年ぶりのこと。さらに今回のマクラーレンのコンストラクターズ選手権制覇は、2009年ブラウンGPとなるカスタマーチームの優勝としても注目すべきことだった。カスタマーチームがタイトルを取ったことをレッドブルとRBに事実上のワークス体制でパワーユニットを供給しているHRCとして、折原GMはどんな思いで受け止めているのだろうか。
「ワークスとカスタマーの差が、ホモロゲーションされていると小さくなっていることは確かだと思います。クルマを開発していくときはエンジンの形に合わせて進めていくので、ワークスのほうがアドバンテージがあったと思いますが、いまはホモロゲーションされていて骨格は変わらないので、差が小さくなっていると思います」
ただし、折原GMはワークス体制のメリットはマシンの開発以外にもあると言う。
「細かなデータ設定はワークスチームの要望に合わせて調整します。メルセデスとマクラーレンの関係は詳しくはわかりませんが、おそらくメルセデスPUの細かなデータ設定はワークスであるメルセデスの要望を聞いてやっているはずです。なので、そういう部分は今後もチームと関係を密にして、やっていきたいです」
2024年シーズンは幕を閉じた。いよいよ、2025年は現行レギュレーション最終年となる。折原GMは次のように抱負を語った。
「2025年はレッドブルとRBとパートナーとして戦う最終年なので、いい形で締めくくりたい。また2025年はホモロゲーションされたパワーユニットとしても最終年。開発は凍結されていますが、まだ詰められる部分はあるので、いまのエンジンを使い切ってチャンピオンで終わりたい」
