事件はサーキットの外でも起きている。もちろん、サーキットの中で起きているのは言うまでもない。水面下で蠢くチーム、ドライバー、グランプリにまつわる未確認情報を調査員が独自に調査。送られてきた報告書を公開する。
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エイドリアン・ニューウェイが、アストンマーティン加入に同意する前に出した要求のひとつはチームを驚かせたが、同時に、この温厚なエンジニアが創造的な仕事にどれほど身を捧げるのかということが示された。広く知られているように、アストンマーティンは2024年シーズン中のある午後に全員を早めに帰宅させたため、ニューウェイが到着して最新式のF1ファクトリーを隅々まで見学したときには、敷地内は空っぽだった。
予想されていたとおりニューウェイは、ローレンス・ストロールがアストンマーティンをF1で最も競争力のあるチームにするために獲得したすべての部門とハードウェアを、時間をかけてチェックした。その後ニューウェイは、ストロールが彼のために用意しておいたオフィスを見せられた。
そこには、この気さくなエンジニアが今でも作品を作るために使っている有名な製図板がすでに置かれていた。ニューウェイは、ひとつのことを除き、あらゆる細部に非常に満足していた。ストロールが驚いたことに、ニューウェイは、「私はどこで寝たらいいのか」と尋ねたのだ。
ニューウェイは、創作のプロセスに入ると終わらせるまで途中で止めたくないので、時には長時間働き続け、遅くなって疲労のために家にクルマで帰れないこともあるのだと説明した。レッドブルが3月3日から彼をリリースすることに同意したため、ニューウェイのオフィスにはもちろん今はベッドが用意されている。彼は今後そこで仕事を始めることになるだろう。
■ハース、ピットウォールスタンドを拡張

ハースF1チームは、バーレーンでのプレシーズンテストの開始時に、ピットウォールスタンドのサイズを2倍に拡張して、周囲の注目を集めた。今まではわずか4人しか収容できない非常に小さなスタンドを数年間使用していたのだ。このピットウォールスタンドが初めて試されたのは、2022年シーズンの終盤のアブダビでのことだったが、当時のチーム代表ギュンター・シュタイナーは、ガレージから作業すればさらに多くの情報を得ることができるため、彼やレースエンジニアがピットウォールにいる必要はないと説明した。
シュタイナーは、ピットウォールで作業する人員を大幅に削減するという決断を正当化するために、コストとロジスティクス上の理由も挙げていた。しかし現在、小松礼雄代表はより伝統的なセットアップに戻した。また、チームにまったく新しいスタンドを設置させるのではなく、既存の構造物ふたつを単純に組み合わせ、テストとグランプリ中に最大9人がピットウォールから作業できるようにすることを決めた。
これにより、チームはガレージの中央でデータスクリーンが占めていたスペースの一部を空けることにもなる。ハースは現在、ライバルの9チームと同じ運営方法に戻り、以前の体制が推進していた実験に終止符を打った。
■F1と違う緊張感

ルーキーのアンドレア・キミ・アントネッリとオリバー・ベアマンは、最近路上運転免許試験に合格しなければならなかった経験を共有している。昨年F2でチームメイトだったこのふたりのドライバーは、時速300km以上でレースをしている時よりも、遅かれ早かれ我々全員が合格しなければならない試験にストレスを感じていたのは明らかだった。
アントネッリは、「あまりレッスンを受けられなかったし、バーレーンのテスト前に不合格になったら、レッスンを受けて運転免許試験を受けるのに十分な時間が取れるまで1年かかるとわかっていたので」、とてもストレスを感じていたと明かした。
メルセデスのドライバーにとって、「練習時間がほとんどなかったので、最初の試みで縦列駐車をするのは本当に難しかった」が、アントネッリは、3回目でようやく試験に合格したベアマンよりもはるかにうまくいったようだ。
運転免許試験にもっと気楽な姿勢で臨んでいたベアマンは、次のように認めた。「最初の試験の前には何も教習を受けていなかったし、オレンジの信号が赤に変わったときに通過したので、それで終わりだった。2回目の試験では、ラウンドアバウトでミスをしてしまった。練習中にあまりラウンドアバウトを通っていなかったからね……。3回目の挑戦でようやく運転免許を取ることができたよ」