ちなみにメルセデスに次いで2番目にホイールベースが長い3691mmのフォース・インディアもシンガポールGPでは、予選で12位と14位に終わった。
だが、バレスはホイールベースそのものが原因ではないというのだ。そして「われわれのマシンと、ライバルのマシンにはホイールベース以外にも異なる点がある」と言って、手のひらを下に向けて、手首を少し曲げてみせた。それは車体のレーキ角を意味する。
現在のF1マシンはダウンフォースを稼ぐために、静止状態で車体を前傾姿勢させているマシンが多い。こうすることで低速時にフロントウイングのダウンフォースを増やし、直線区間ではリヤが沈み込むため空気抵抗が減って、ストレートスピードが上がるというメリットがある。
しかし、このアイディアにはスピードが上昇してリヤが沈み込む前の段階で、前傾姿勢が空気抵抗となるというデメリットもある。それを嫌って別なアイディアでマシンを開発したのがメルセデスだった。
メルセデスのレーキ角はフェラーリやレッドブルよりも緩やかで、どちらかといえば水平に近い。つまり、どのような状態でも車高が一定になるようデザインされている。ただし、それにはフロアが大きいほうがいい。そのために、ホイールベースを伸ばしたのではないだろうか。

つまり、メルセデスのマシンは車高の変化が小さい中~高速コーナーで安定したダウンフォースが出るように設計されている。そのため、低速コーナーが多いストップ・アンド・ゴー型のサーキットではブレーキングやアクセレーションの際にマシンがピッチングするため、車高の変化に弱いメルセデスが苦しむのではないか考えられる。