ところが、予選トップ10のスタートタイヤ装着義務は、レース日もドライコンディションが保たれた場合の話だ。決勝日のモナコは雨に見舞われ、ウエットレースとなった。全車にウエットタイヤの装着が義務づけられ、レースはセーフティカー先導でのスタートとなる。これでタイヤは、全車が同条件となったわけだ。

 セーフティカーは7周目の終わりで解除された。この周でルノーのケビン・マグヌッセンがピットに飛び込み、浅溝のインターミディエイトへの交換作業を行なった。同じころチームメイトのジョリオン・パーマーが白線に乗ってクラッシュしたため、次の周にはコース上がバーチャル・セーフティカー(VSC)状態となったことも手伝い、マクラーレンのジェンソン・バトン、ザウバーのフェリペ・ナッセ、トロロッソのダニール・クビアトが同じくインターミディエイトへと早めに交換した。

アンダーカットができない、モナコの掟

 VSCが解除となった10周目、リカルドの刻んだファステストラップを、すぐさまバトン、ナッセとインターミディエイト勢が相次いで塗り替える。路面の水量が減りつつあったことは確かだが、上位勢は容易にタイヤ交換の選択には動けない。ここはモナコだ。作業を終えてコースに戻ったとき、もし遅いクルマに捕まれば、自分のほうが速かったとしても簡単に抜けるものではない。

 上位勢では4番手フェラーリのセバスチャン・ベッテルが13周終わりでインターミディエイトへの交換を行い、これが上位勢で最も早いタイミング。しかし、ピットアウト後のベッテルはウエットタイヤで走行を続けるウイリアムズのフェリペ・マッサを抜けず、まさに「聖地の掟」どおりに優勝戦線から脱落した。

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