しかし、それよりもやはり圧巻だったのはアロンソのパフォーマンスだ。1回目の走行を終え、「プロトタイプ同士は性能が近いのでオーバーテイクは難しい。クルマ、タイヤ、そして燃料をセーブしながらの走りにも全力を投入しなければならない」
「序盤のバトルで体験したが、スピード差のあるGTカーたちが作るトラフィックを処理するのは難しい。驚くようなポジション採りをする相手とラインをクロスさせるようなことさえある。でもそれは全員にとって同じ条件だ」などと話していたアロンソは、その経験を活かして自分はどんな走りができるのか? それを試すべく夜間の4連続スティントに打って出た。
フルコースコーションが出なければ3時間ほぼ走りっ放しというタフなチャレンジだ。スポーツカーの常連で体力のある者でもトリプルスティントまでというのが常識の世界だ。
アロンソのル・マンに向けた自らの実戦テストは夜の10時過ぎにスタート。すぐ前に乗ったフィル・ハンソンがタイヤバーストに見舞われ、アロンソはトップから4ラップ遅れでコースに復帰。ここからの80周を超える走行でアロンソは驚くべきスピードと安定性を両立させていた。ラップタイムは1分40秒台でスタートしたが、トラフィックもある状況下で39秒、38秒台を何度も記録した。
残念なことに、アロンソのデイトナ24時間はこの後にブレーキトラブルに見舞われた。マスターシリンダーまで多くの部品交換が必要になった作業で23号車リジェは、スタートから10時間の時点ではトップから2周ダウンの7番手まで挽回していたが、11時間経過時点では25周ダウンとポジションを大きく落としていた。
「僕らのレースはそこで終わった。そこからは完走を第一の目標とした。その後もスロットル、ブレーキ、タイヤとトラブルが幾つも出たのは残念だった。しかし、テストやプラクティス、予選まででは遅かった僕らが、レースではハイペースを保てていた。十分な競争力があったよ」

「ファステストラップも上位にランクされるものを記録できた。走っている間は楽しかったし、多くの貴重な経験ができたと感じている。次の耐久レースに向けて自信と勢いを手に入れることができた」とアロンソ。
「今年のル・マンへの出場の可能性は、レース前は50対50だってが、今は60対40で出る方向かな? もしル・マンに出ることになったら、その時の僕はプロトタイプによる耐久レースの経験がある。より準備のできたドライバーとなれるだろう。ほんの24時間前には知らなかったことを、たくさん経験することができたんだからね」と彼は続けた。
「ル・マン出場に対して、いつ決断しなければ……という日程の区切りなどは決めていない。ただし、2018年はF1を最優先するので、どこかのGPをスキップすることはない。そしてデイトナは来年以降も出ると思うよ。完全にオフのタイミングだし、自転車などのトレーニングなどよりも実際にクルマを走らせる方がずっと役に立つから」とF1チャンピオンは締めくくった。
