「コンディションが許せば、120周程度は走る予定でした」小雪がちらつき始めた午後9時半。チームミーティングの途中で抜け出した田辺豊治ホンダF1テクニカル・ディレクターの顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
「まずはできるだけ周回を稼いで、潰すべき問題を早期に潰していきたい」とテスト開始前に言っていた。それだけにコンディションの悪化にもかかわらずこれだけの距離を稼ぎ、しかもまったくのトラブルフリーだったことには、十分に満足しているようだった。
今季は年間3基という厳しい使用制限がかかる。しかし信頼性の話題ばかりが先行することは、田辺ディレクターの本意ではないようだ。
「信頼性重視でパワーを落としてやってると、いざパワーを上げた時に、われわれの方もあれってことが起きかねない。レースでの使い方を想定しながら、極端に信頼性へ振らないやり方をしてます」
信頼性とパフォーマンスを、いかに高いレベルで両立させるか。開発のカギを握るのはまさにその部分であり、先行するライバルたちに追いつくにはそこを突き詰めていくしかない。
2日目にはピエール・ガスリーがステアリングを握る。今週は不順な天候が続きそうだが、周回数さえしっかり稼げれば、4日間のテスト終了時にはトロロッソ・ホンダの今季のポテンシャルが、ある程度は見えてくるはずである。