一方でホンダ製パワーユニットに関しては、「全然問題なかったよ」と言うものの、前日のハートレーほどには手放しの高評価ではなかった。アグレッシブなドライビングが身上のガスリーだが、現時点ではまだ慎重に、今季のパッケージの見極めをしている段階という印象だった。
ところでトロロッソ・ホンダは初日に主要スタッフが出席しての合同会見を行なったのだが、帰りがけに報道陣全員にお土産を配ってくれた。
最近のF1では珍しい気配りにちょっと驚き、うれしかったが、中身を見てさらにびっくりした。何と使用済みのホイールナットに、ふたりのドライバーのサインが添えられた記念品だったのである。チームにしてみれば捨てるだけの消耗品パーツを、F1好きの心をくすぐる品に変身させるとは、トロロッソもなかなかやるもんである。

それを写真に撮ってSNSに上げたところ、思わぬ反響があった。
「あえてのホイールナット?」とか「あのチームへの皮肉ですね」というメッセージが来たのだ。一瞬何のことかわからなかったが、マクラーレンのことを指しているとすぐに思い当たった。というのもこの日、フェルナンド・アロンソが右後輪を脱落させてコースアウトしたのだが、原因がホイールナットのトラブルだったのである。
もちろんこの記念品は何日も前から用意されていたもので、未来が見える超能力者がトロロッソにいるとは思えない。しかしアロンソがコースから飛び出したのは午前9時43分で、トロロッソの会見が始まったのはそのわずか20分後という、タイミング的にも絶妙なものだった。
翌日トロロッソの広報スタッフに、「日本のF1ファンが、こんなリアクションしてましたよ」と伝えてみた。彼女は「いやいや。そんな意図、持ってるわけないでしょ」と言いつつも、その顔からは押さえきれない愉快そうな笑みがこぼれていた。