ベッテルはフレッシュなソフト、この違いを意識するのは当然だ。メルセデスがPUを“パワーモード”に高めて追ってきても、ハミルトンの7周分オールドなタイヤは厳しくなるだろうと読める。案の定、47周目の9コーナーでワイドに膨らんだハミルトン、それでも再びプッシュして52周目に1.018秒差まで迫ってきた。18年シーズン最初のこの攻防に観客達はチケット料金に値するものを見られた(と思う)。
予選では5年連続PPを豪速で決めたハミルトンも、53周目にはガクンとペースダウン。コクピットでステアリングのダイアルを次々に操作、“OFFサイン”がパネル状に連続表示された。
昨年も起きた症状、リヤタイヤのオーバーヒートによって毎周1秒遅れていく。夕闇が近づいたアルバートパーク、彼のハロ越しに見える視界からフェラーリは消えていった。
もう一つ、フェラーリは正しいことをやっていた。PPハミルトンにくいさがるミッションをライコネンに指示、最年長ベテランは17周目まで追走(この間、3位ベッテルはタイヤをセーブし中盤にそなえた)。
そして18周目、早々にライコネンにピットインの指示。交換したソフトで残り50周もカバーすることになるのに彼は、無線で文句を言わずにこの“陽動作戦”を遂行する。
フェラーリ陣営の予想通り、メルセデスはつられて次の19周目に首位ハミルトンを呼び込んだ。これからソフトで49周を戦うことになるのに対応して動いた。先頭ベッテルは2位ハミルトンと3位ライコネンを従えたまま、タイヤと燃費をケアしながら何かが起こるのを待っているように見えた……。