一方、ウィリスはダークホースである。BARホンダでの躍進の後、レッドブルに移籍した彼はニューウェイの下でエンジニアリング部門の再編を行った。そして、同じような役職をブラックリーにあるメルセデスのファクトリーでも行った。実績のある能力を持ち、流暢なイタリア語を話す彼は、私には適材であると思われる。
メルセデスでウィリスと似たような役職を務めた後、ルノーに再び戻ったボブ・ベルもまた理想的な候補である。また、メディアに度々取りざたされているトロロッソのジェームス・キーも候補の一人だ。彼が素晴らしい仕事をしており、また現在はファエンツァにあるファクトリーでイタリア流の職務経験を積んでいる。しかし、キーはフェラーリでトップの役職を務めることでメディアの関心を引くことを好くような人物ではない。
彼は寡黙で有能なマネージャーであるが、マラネロに息づく、『目的のためには手段を選ばない』ような政治スタイルは彼にはそぐわない。 しかし、ウィリスかベルのどちらかを表看板として据えるのであれば、キーを据えた方がフェラーリにとって有益であるように思える。
今までに挙げた人物を雇用するにしろ、他カテゴリーから技術スタッフを雇用するにしろ、ガーデニング休暇などを使って現在の契約を全うさせる必要がある。これは2017年の開幕戦前にフェラーリのテクニカルディレクターが定まりそうになく、少なくとも6か月は待たなくてはならないということを意味している。
つまり、2016年は失敗のシーズンとなり、2017年もまた失敗のシーズンとなることが考えられる。新しいテクニカルディレクターがその能力を発揮し始めるのは早くても2018年からであり、オペレーションはその後数年かけて改善していく。
結果としてフェラーリは今後2~3シーズンはベストを引き出すことが難しく、これまでずっと続いているパフォーマンスの不足、期待以下の成績という状況をさらに長引かせることになりそうだ。