更新日: 2018.07.18 12:02
イギリスGP後にガスリーがこぼした「0.9秒遅い」現状への不満と誤解【トロロッソ・ホンダF1コラム】
実はフランスGPの予選を終えた時点でガスリーはこんなことも言っていた。
「GPSデータを見る限りではコーナーの速さは悪くない。だけどストレートのスピードが速くなかった。土曜になってスペック1からスペック2に換えたのにカナダの時よりストレートが遅かったんだ」
これに対して、チームが導き出した結論は空力セットアップの妥協点を誤ったというものだった。
トロロッソはシルバーストンでもダウンフォースを削らず、コーナー重視でストレートスピードを犠牲にして走った。そこを説明した上で最初の不満を述べていれば、イギリスGP後にわざわざ予選後のこのコメントを引っ張り出して、ホンダ批判という形で記事にされるようなこともなかったのかもしれない。「あれでは誤解される」と指摘されたガスリーは決勝後に下記のような丁寧な説明を加えたが、後の祭りだった。
「僕たちはセットアップ面で正しいウイングではなかったと考えているし、ダウンフォースと最高速のバランスという点でもう少し良い妥協点があったはずだ。正しいウイングでなかったのは初めてのことではなくて、バクーでもそうだった。(最高速不足は)間違いなくパワーユニットだけの問題ではなくて、車体面でももっと良い仕事ができたはずだ」
もうひとつの事実誤認は、「0.9秒」だ。
ガスリーは予選タイムで0.9秒差を付けられたと語ったが、Q1ではシャルル・ルクレール対比で0.437秒、Q2でも0.553秒差でしかなかった。Q2では中団最上位のロマン・グロージャンに0.821秒差を付けられたが、フォース・インディアやザウバーとの差はそこまで大きくはなかったのだ。
確かにメルセデスAMGやフェラーリのワークスチームが予選で使う予選スペシャルモードと較べれば、ホンダやルノーはそのくらいの劣勢に立たされているかもしれない。しかしICE(内燃機関)の寿命を削りながら点火時期を極限まで早めノッキングを多発させて出力をひねり出す予選スペシャルモードが自由に使えるのはワークスチームのみで、寿命に余裕を持った運用がなされているカスタマーチームではその使用はかなり限定的であり、フォース・インディアやザウバーとの間にそこまでの出力差はない。
ガスリーが言うように、コーナーは同等でストレートで失った分がラップタイム差になっているのだとしたら、ラップタイム0.5秒差=20~25kWというのは妥当な線だろう。
どうしてガスリーが0.9秒と勘違いしたのかは分からないが、ハースとの差を見てそれを0.9秒とやや大きめに言ったのかもしれない。