
これをフカヨミすると、万事において抜かりなく入念に、慎重に、着実にデータベースを構築して、それに則ってレースを管理するメルセデスには収集可能データが不十分だった。スーパーソフトのスタートを選び、ソフトでつなぐ“2ストップ・プラン”の根拠は過去のデータから想定されたものだろう。さらに天候の影響に加えて、日曜にピレリがタイヤ内圧推奨値を大きく変えた。ドライのリヤタイヤは2017年が19.0PSI、2018年のアメリカGP予選日まで20.0PSI、決勝日からは21.5PSI(!)。昨年より約15%も高められたのだ。
この変化に対応する時間はスタート前レコノサンス・ラップ10分間のみ。
メルセデス陣営だけでなく各チームともスタート練習を繰り返し、そのラップではいつもより速い本番ペースで走行。“ぶっつけ本番ゲーム”に向かうしかない。こうした流れを大胆に要約すると、データ管理レースが得意な『賢いチーム』ほど、いつものようにはできにくくなる。
誤解をおそれず表現するなら『出たとこ勝負』だ。走るドライバーと現場にいるスタッフたちによる“アナログ的”な、ちょっと前のF1期に近いようなレース状況となった7年目のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ……。

勝てるときがめぐってきたベテラン・ライコネンがスタートを決めた。序盤21周をウルトラソフトでトップ疾走、終盤は若いマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を寄せつけなかった。自分がやるべきことを自分がちゃんとやりきったから、ポジティブに『自己満足』、シャンパンを表彰台真ん中でまずラッパ飲みライコネン。5年前のオーストラリアGPのシーンが思い出された。