その会見で、ちょっとしたサプライズがあった。会見では質問者を選択して指名するのはFIAのメディア担当なのだが、そのメディア担当者のところにFOMのスタッフが近寄り、何かヒソヒソと話をしていた。すると、そのメディア担当者が次に指名したのは、会見場の後方中央に立っていた初老の紳士だった。マイクを渡されたその人物は、質問ではなく、こんなメッセージをハミルトンに贈った。
「ルイス、君はスーパースターだ。そして、われわれのファッションチームの一員だ。君がわれわれの仲間であることを私は誇りに思っているよ」

マイクを手にした紳士は、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のファッションデザイナーのトミー・ヒルフィガーだった。高校時代にジーンズを売って成功を収めた後、ファッションブランド『TOMMY HILFIGER』を興し、一代で現在の地位を築いたヒルフィガー。そんな彼からの賛辞に、ハミルトンは降壇して肩を抱き合って感謝し、こう言った。
「僕もいつの日か、彼のように何かを興したいと思っている。10年後をみていてほしい」

こういった演出をFIAが認めるのも、チャンピオン会見ならではのこと。そして、会見を締めくくるのはFIAのメディア担当ではないのも、特例だ。
「最後の質問は彼」とFIAのメディア担当が指名した人物は、メルセデスの広報。そして、こう言った。
「ルイス、そろそろ行く時間だ。集合写真を撮るために、チームのみんなが待っているからね」