ホンダF1副TD本橋の2018年総括(3):PU運用面で大きく成長し、深い絆で結ばれたトロロッソ・ホンダに欠けていたもの
プレシーズンテストで、トロロッソ・ホンダはメルセデス、フェラーリに次ぐ10チーム中、3番目の走行距離を稼ぎ、マシンを熟成させることに成功。開幕戦ではピエール・ガスリーのパワーユニットにMGU-H(熱エネルギー回生システム)のトラブルが発生したものの、それ以外は深刻なトラブルを引き起こすことはなかった。そして、第7戦カナダGPにスペック2を投入した。
「スペック1がきちんと走ってくれたので、スペック2はパワーに振った仕様になっていました。といっても現在のF1は燃料の流入量が決まっているので、燃焼効率が高くなった仕様となっています」
このスペック2は9月の第15戦シンガポールGPまで使用された。ただし、本橋副TDは同じスペック2でも、レースによって異なる使い方をしていたという。
「スペック2からは、現場でパワーユニットの状況をきちんと把握しながら使っていました。というのも新しいPUというのは、それまで使用していたPUとは異なる特性を持っているからです」
「もちろん、その特性はベンチによるテストでも把握しているのですが、実際に車体に搭載して実走しないとわからない部分があります。その特性をきちんと理解していないと、本来持っている性能も引き出せなければ、信頼面での問題に発展しかねない。したがって、現場でどういう振る舞いをするのかを、きちんと把握しながら使っていました」
「つまり、最初はそんなに攻めた使い方をしていなかった。特性を理解しながら徐々に攻めていき、夏休み前(ハンガリーGP)くらいになって、ようやく持っているパフォーマンスをきちんと使い切るようになったと思います」
ハンガリーGPでは今年初めて2台そろってQ2に進出したトロロッソ・ホンダ。その理由は、総括(2)でコミュニケーションが改善されたからだと本橋副TDは語っていたが、ハード面でもホンダがスペック2をかなり攻めた使い方ができるようになっていたわけだ。
そして、9月末のロシアGPのフリー走行にスペック3が登場。しかし、そのスペック3でホンダはオシレーション(共振)に悩まされた。
「エンジンがどのようにトルクを出すかによって、ギヤボックスなどの駆動系への振動が変わってしまうんです。もし、エンジンの燃焼が少しでも不安定な部分があるとトルクも安定しないで別の振動を発生させてしまう。そうなると、今度はそれがきっかけになって、別の振動を生み出す。その辺の詰めが、スペック3を使うにあたってはちょっと甘かったと反省してます」
この問題への対応には少し時間を要したものの、メキシコGP以降は再発させてなかった。つまりスペック3の構造的な問題ではなく、スペック3の特性に合った使い方に課題があったと言っていい。この問題の対処については、「オシレーションの改善は、基本的にすべてデータ設定で対処しました」と明かしてくれた。