Translation:Kunio Shibata

 費用が高いという大きな欠点はあるものの、現在のF1パワーユニットはおそらく世界最高のレーシングエンジンと言っていいだろう。何しろかつてのV8エンジンよりはるかに強大なパワーを発生しながら、3分の1の燃料しか消費していないのである。

 一方で現行パワーユニットには、「音が控えめすぎる」というファンからの批判、そして「燃費運転を強いられる」というドライバーからの不満も根強い。

 さらにルノーやホンダのように、F1で輝かしい実績を築いてきた世界的自動車メーカーですら、メルセデス、フェラーリのレベルに追いつくのに今も手こずっている。

2018年F1第20戦ブラジルGP セバスチャン・ベッテルのマシンはエンジン本体のセンサー故障

 そんな状況を一気に打開しようと、FIAとFOMはV6ターボハイブリッドの2021年以降の簡素化を提案した。具体的にはMGU-H(熱エネルギー回生システム)を廃止して、開発費を安く、かつメーカー間の格差をなくす。そして最高回転数を上げることでエンジン音を大きくし、共通パーツを大胆に導入するという案だった。

 しかし、これらの提案が受け入れられることはなさそうだ。ここまで莫大な開発費を投じて現行パワーユニットを作り上げてきた既存メーカーが、一致して猛反対しているからである。中でも、MGU-Hの廃止への拒否反応が強い。

「MGU-Hには、ふたつのアドバンテージがある」と、コーウェルは言う。

「まずこれこそが、エネルギー回生システムの鍵となる技術であること。MGU-Hの進化こそが、ライバルに差を付ける最大の武器であることが、我々も含めエンジンメーカーはよくわかっている」

「そしてこのシステムのおかげで、ターボラグを劇的に解消できるようになった。ターボコンプレッサーは、タービンとコンプレッサーで構成されている。しかしその間に電気モーターとジェネレーター(発電機)を介している。これがMGU-Hでね。ドライバーがスロットルペダルを緩めると同時に、コンプレッサーがターボに代わってエンジン内に空気を送り込む。その結果、タイムラグなしに最適なトルクが使えるわけだ」

「これまでは単なる排気熱として空中に霧散していたエネルギーの約5%が、このシステムのおかげで回収されるようになった。ようやく実用化できたこの貴重な技術を、自動車メーカーが簡単に手放すとは思えない」

 ということでV6ターボハイブリッドシステムは、今後もF1で使われることになるだろう。迫力ある音の問題をどうするかは、また改めて考える必要がありそうだ。

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