だが好事魔多し。最後に驚くような結末が待っていた。
92周目のターン11を抜けターン12へ右にステアリングを切っていった瞬間、ガスリーはリヤの挙動を乱してカウンターを当てたが、あの速いコーナリング速度では間に合わずにリヤが抜け、マシンはスピン状態に。後ろ向きのままグラベルを突っ切ってバリアに突っ込んだ。
「僕らはいつもマシンを限界までプッシュしているし、その限界近くのエリアでマシンをコントロールしているんだ。そんな中でスロットルを踏みすぎてリヤのコントロールを失った。単純にそれだけのことだよ」
幸いだったのはぶつかったのがテックプロ・バリアと呼ばれる樹脂製バリアで、リヤウイングやリヤカウルの一部は破損したものの、リヤサスペンションやカウル内部にはそれほど大きなダメージが及んでいないようだったことだ。残り1時間の走行時間は失ったが、翌日以降のテストプログラムに影響を及ぼすようなクラッシュにならなかったのは幸いだった。
「ちょっとビックリしたけど、でも起きてしまったことはどうすることもできないからね。まだテストは6日間残されている。まだまだやれることはあるよ」
ガスリーにとってのレッドブル初日は、クラッシュという苦い経験もありながらも、それ以上に得たものと今後に向けて感じられた希望の方が圧倒的に大きかった。午後6時のセッション終了を待たずして早々に私服のデニムとチームシャツに着替え終えたにも関わらず余裕の笑顔を浮かべたガスリーの表情からは、はっきりとそのことが窺えた。