コースインしたクビアトのマシンにはQ2最初のアタックで使用した中古タイヤが履かされていた。これではタイムアップは望めず、クビアトは仕方なくアタックを断念してピットに戻り、15位Q2敗退が決まった。
「一体どういうことなんだ!?」
1年ぶりに現役復帰したクビアトは精神的に大きく成長し、以前とは比べものにならないほど冷静で大人なアプローチを採ることができるようになった。しかしこの時ばかりはさすがに感情の高ぶりを抑えることができなかった。レース週末の中で予選が最も重要であることは、開幕戦の予選でも学んだはずのことだったからだ。
予選直後の取材対応でも苛立ちは抑えられない様子のクビアトだったが、それでも直接的なチーム批判になるような詳細を語ることはしなかった。
「あれはオペレーションの問題だよ。詳しいことは僕に聞かないでくれ。(タイヤが足りなかった?)そうかもしれないし、そうではないかもしれない。オペレーションの問題がなければ普通にアタックできていたんだけどね」
通常、レースエンジニアからインターコムを介してマシンに装着すべきタイヤのセットナンバーがメカニックに伝えられ、ガレージ内のタイヤ保管場所から運び込まれたタイヤがマシンに装着される。エンジニアが誤ったセットナンバーを伝えてしまったのか、聞き間違いがあったのか、タイヤを運んだタイヤマンがミスをしたのか、その詳細は明らかではない。
いずれにしてもタイヤはガレージから出る直前までタイヤウォーマーを被っており、その中身は目視できない。しかし出ていく瞬間に新品か中古かくらいは分かったはずだ。
タイヤウォーマーにはセットナンバーが表記されているため、それをきちんと見て理解していれば、間違いに気付くことができるのだ。そして、コースに送り出す前に気付いて新品に交換していれば、時間内にタイムアタックすることは可能だったはずで、トロロッソ・ホンダの実力からすればQ3進出の可能性も充分にあったはずだ。
タイヤの装着ミスが起きたことだけでなく、ガレージ内には何十人ものスタッフがいたにもかかわらず、すぐにミスに気付かなかったこと、もしくは気付いていたとしてもレースエンジニアに報告が行かなかったことは、組織としての弱点だ。バーレーンGPでの好結果は、このミスによって失われたと言っても過言ではなかった。
クビアトもアレクサンダー・アルボンも決勝では中団グループの集団の中でのレースを強いられた。しかし前がクリアになった時には上位勢にも匹敵する速さを見せた。