
フェラーリ:行っても良いぞ、プッシュしろ。
ベッテル:あぁ、近付こうとしているよ。
そして10周目、ついにチームからはドライバースワップの指示が出された。1-2体制のメルセデスAMGはどんどん先行しており、チーム全体の利益を考えればこれは妥当な判断だった。
フェラーリ:VETを先行させてくれ。
ルクレール:今引き離しているところじゃないか!
一旦は抵抗したものの、ルクレールも冷静にチームからの指示に従い、11周目のターン1でバックオフしてベッテルを先行させた。
ルクレール:行かせるよ。
フェラーリ:了解。
ルクレール:でも……OK。
フェラーリ:我々は自分たちの仕事をする。集中しろ。
しかし前がクリアになったベッテルもそれほど大きくペースアップはできない。ルクレールの背後で走っている間にスライドしてオーバーヒートし、デグラデーションが進んでしまったからだ。ペースは1分39秒台中盤まで落ちた。
今度はルクレールがベッテルに抑え込まれるようなかたちになり、再度のポジションスワップをルクレールが求めてきた。
ルクレール:すごくタイムロスしているよ。どうしてほしいんだ? どうしてほしいか教えてくれ。
フェラーリ:あぁ、了解。それを検討しているところだ。
しかしルクレールは順位を入れ換えるところまでは接近できず、17周目にピットに飛び込んだマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のアンダーカットに対抗するために18周目にベッテルが先にピットインすることになった。タイヤのタレが大きい以上、ここで入らなければ逆転されてしまう可能性が高かったからだ。
その背後にいたルクレールは、翌周ピットインしたとしてもみすみすフェルスタッペンにアンダーカットを許すことになるのは明らかだった。
フェラーリ:我々はできるだけ長く引っ張ってレース終盤を考えて走る。でもプッシュし続けろ。
ルクレール:了解。
なるべくピットストップを遅らせ、1ストップ作戦で走り切ることで活路を見出そうと第1スティントを引っ張ったルクレールだったが、ベッテルより4周先の22周目までしか引っ張ることができなかった。
これでタイヤ的なアドバンテージはほとんど生み出せないまま、第2スティント早々に2ストップ作戦に切り替えることになった。