フリー走行3回目でクラッシュしたとはいえ、すでにアルボンは9番手タイムを記録しており、Q3に進めるという自信を持っていた。それだけに悔しさは大きかったようだが、アルボンの持ち前の前向きさですぐに決勝に向けて気持ちを切り替えていた。ロングランペースにはもっと自信があったからだ。
「FP3では良いペースで走れていただけにあのクラッシュは残念だよ。僕らにはQ3へ進むだけの速さがあったと思う。終わったことを悔やんでも仕方がないし、この経験から学んで明日に向けて気持ちを切り替えるしかないよ。学んで成長していくことこそが大切だからね」(アルボン)
クビアトは予選Q2最後のアタックでターン11で僅かにミスを犯して0.022秒差でQ3進出を逃した。しかしソフトタイヤのデグラデーションが大きく上位勢がミディアムをスタートタイヤに選んだように、下手にQ3に進んでソフトでスタートするくらいならミディアムを選べる11番グリッドの方がむしろ利点がありそうだった。
「クルマは良くなってきているし、今年ここまでの予選の中で一番の出来だった。良い方向に進んでいるのは確かだし、これからもっと上げていければ良いね」とは言うものの、クビアトは金曜からやや苛立ちを含んだような表情を見せていた。
それが影響したのかどうかは定かでないが、決勝ではスタート直後の混乱の中でマクラーレンの2台と接触してドライブスルーペナルティを科され後退。フロントウイングとフロアにダメージを負っており、クビアトのレースは実質的に1周目で終わってしまったようなものだった。
「よくある1周目のアクシデントだよ。1台のクルマ(ランド・ノリス)がコースの外側から戻ってきて、もう1台のクルマ(カルロス・サインツJr.)は僕に充分なスペースを残さずに僕をサンドイッチにしてきて接触した結果、連鎖反応のように僕ともう1台のクルマ(ノリス)が接触したんだ。僕は後ろから追突されただけで何も見えていなかったのにドライブスルーペナルティを受けた理由が分からないね」(クビアト)
レース後にスチュワードのところに行き長々と話し合ったクビアトだが、最後までその裁定には納得がいかなかったという。

ターン6の立ち上がりではみ出してアグレッシブにコースへ戻ってきたノリスと僅かに接触したサインツと、立ち上がりでワイドに膨らんでいったクビアトのラインが交錯し接触。それによって弾き飛ばされたクビアトがノリスのマシンにぶつかった。1周目の混雑の中だけにレーシングアクシデントと判断されてもおかしくない状況だったが、スチュワードはクビアトのライン変更がサインツの行き場を奪ったと判断した。
いずれにしても不必要なライン変更と接触であり、入賞のチャンスがあったレースをフイにしたことに変わりはない。1年ぶりの現役復帰以来、冷静な走りを続けてきたクビアトだったが、この中国GPの週末は金曜のトラブルからやや落ち着きをなくしてしまっていたように見えた。