ボッタスも19ラップを同じ目的で進めた。ふたり合わせて36ラップ、これはフェラーリ勢の28ラップよりも多い。初日から先行した相手は予選仕様のチェックに時間を割き、昨年PPタイムに肉薄する仕上がりに自信を深めていた。とくに単独ラン(トーイング無し)でトップのルクレールはセクター1と2で最速。ブレーキング・タッチは直角コーナーでも、旧市街エリアの狭いカーブでも抜群だ。
流れは明らかにフェラーリ優勢に見えた。いや、メルセデスがそう見せかけていたのかもしれない。予選Q1はハミルトン3番手、ボッタス6番手にとどまり、彼らはなりを潜めた。このセッションにロバート・クビサ(ウイリアムズ)の8コーナー事故が起き、Q2開始が遅れた。この貴重な中断時間にメルセデス・チームが何を模索し、何を変え、何をドライバーと“協業”したのか。
温度条件が急激に低下するコンディションをリサーチし、それに合わせこむ微細なチューニングを施した(のだろう)。こういう状況下のインサイダー無線情報はいっさいOAされず、ガレージ内映像もOAされないが……。

遅れたQ2セッション開始にフェラーリは満を持したかのように(過信したのか)、硬いミディアムで行かせた。ふたりともそれに従った。そしてシャルル・ルクレールが8コーナーでクラッシュ。アゼルバイジャンGP勝負の“瞬間・分岐点”となった。
手前の7コーナーを新鋭はすばらしい加速で立ち上がり、その勢いのままブレーキングに入った。速すぎる(!)。ミディアムの縦方向グリップはソフトと違い、彼のリズム(ソフト)との違いがあった。ロックアップする急減速操作も間に合わずクラッシュ、直後に事故現場を通過したベッテルはちらりと新鋭がやってしまったのを横目で見た。