論点を変えよう。一方の当事者であるハミルトンには、3コーナーから4コーナーでの一連のプレーがすべてはっきりと見えていた。
確かに後続のハミルトンは“事故回避”のためにブレーキング(減速)と、きわどいラインを強いられた。それは自分が相手との接触を避けるためだ。

危うい瞬間だったがふたりはタッチせず、二台は壁もヒットせず、そのままのオーダーで切り抜けていった。個人的にはチャンピオン同士だからできて、彼らでなければ何が起きても不思議ではなかったと思われる。
47周目までのレースはベッテルとハミルトンの緊迫した展開ばかりか、上位から中位、下位まで全域で見ごたえあるドライバーズレースが続いた。
絶好のレース日和に満員となった40回目のジル・ビルヌーブ・サーキット、惜しみない声援と拍手がトップランナーであり、2位敗者のベッテルにおくられた。
スチュワードの権能とレギュレーションの拘束が浮き彫りにされたカナダGP。いまのフォーミュラ・ワンのこれが現実である。
最後にベッテルがあの3コーナーでミスを犯したのは事実、そこまでハミルトンが追撃にうちこんだのも事実、スチュワードがルールブックに従って罰したのも事実。
観戦した多くのファン(他のドライバーたち)が、「この裁定は限りなく“アウト”」とジャッジしたのも、もう一つの事実だ――。
