更新日: 2019.07.16 12:51
F1 Topic:「僕のクルマはピットインできなかった」というアルボン。問題となったパワーユニットの症状とは
問題が発生したとき、すでにアルボンは1回目のピットストップを終えて、タイヤをソフトからミディアムに交換していた。つまり、2種類のコンパウンドを使用しなければならないという義務を済ませており、そのままチェッカーフラッグを目指せる立場にいた。
ただし、アルボンがタイヤ交換を済ませたのは、13周目。残り40周を走りきるにはミディアムは適していないコンパウンドでもあった。
果たして、チームが採った決断は、2回目のストップは得策ではないというものだった。その判断は、レース終盤までは機能していたが、残り10周あたりからアルボンのタイヤは性能が大きく落ち、8番手から12番手までポジションを落としてチェッカーフラッグを受けた。
高圧系のトラブルは、今年のバーレーンGPではダニエル・リカルド(ルノー)が、残り数周でトラブルが発生しリタイアしたとき、同じ問題が発生していたため、マシンを降りる際、コクピットからジャンプして着地した後、外したステアリングホイールを装着し直すことができず、結果的にセーフティーカーが導入され、そのままレースが終了する形となった。
ホンダに関して言えば、田辺TDが現在のポジションに就いた2018年からはこのトラブルは起きていなかった。ホンダがこの類のトラブルを発生させたのは、筆者の記憶によれば、2017年のマクラーレン・ホンダ時代のウインターテスト以来だと思う。
2回目のテストで、ストフェル・バンドーンのパワーユニットに絶縁不良が発生し、地絡(電気が大地に接触して電流が流れること)が疑われる症状が発生したことがあった。このとき、ホンダF1を統率していた長谷川祐介前総責任者は次のように語っていた。
「現在のF1マシンは回生システムを搭載して高圧電流が流れているため、プラスもマイナスも車から完全に浮かせています。それがどちらかでも地面に接触すると地絡となるわけですが、いまのF1でそういうことはおきることはまずない。ただ高圧端子がゴムなどの絶縁物質で覆われていても、地面に接触すると地絡状態になってしまいます」
「今回のトラブルも完全にショートしていたわけではなく、絶縁抵抗があるレベルを下回ったために、ウォーニングが出ていただけです。この類のトラブルはちょっとした絶縁不良でも起きるので、修復するのはそんなに難しいことではないんですが、どこが絶縁不良を起こしているかを探すことのほうが大変な作業になるので、パワーユニットごと交換することにしました」
約2年ぶりに起きた非常に稀なトラブル。次戦ドイツGPまでに対策が講じられることを願う。