更新日: 2019.08.14 20:30
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第10回】ダブル入賞も、チームオーダー発令が決定。将来を左右する正念場で直面した課題と“プロセス”
これで2019年シーズンの前半戦が終わりましたが、評価できる点は、開幕戦の時点でクルマの仕上がりがとても良かったことです。ピットストップの問題はありましたが、クルマの性能という面ではとてもポジティブでした。
第2戦バーレーンGPで初めて問題が起きて以降、ここまで悩まされてきましたが、僕たちはチーム創設4年目にして初めてこれほど大きなマシン開発の問題に直面しました。ですが、これはどんなチームでもいつかは起こることです。普通は問題に対処するためのプロセスや方法ができあがっているものですが、ウチはまだそれを作りきれていない部分があります。
物事がうまくいっている時はそういったプロセスがなくても支障が出ない場合もあるのですが、うまくいかなくなった時はそうはいきません。問題の発見が遅れ、それを発見しても原因究明に時間を要し、究明できても対策にも時間がかかる、という状況です。
本来ならば2年くらい前の時点でそのプロセスができあがっているのが理想でしたが、ほかにやるべきことが多くて手が回りませんでした。正直にいえば、そのツケが回ってきています。
こういう時こそチーム一丸となって解決しなければなりません。トラックサイドのレースエンジニアリング、ビークルパフォーマンスグループ、空力グループと各部署の主張がバラバラではうまくいかないですし、組織として機能しません。だからこそビデオ会議だけでなく(ウチは各部署がイギリス、イタリア、アメリカに分散しているので普段はビデオ会議が多いのです)、実際に顔を突き合わせてのミーティングが重要になります。またビデオ会議をやるにしても、直接の話し合いをふまえて行うビデオ会議と、そうでない場合とは全然違います。
今になって、ようやく物事を正しいステップで進めることができ始めています。どうしてそれが4年目の今なのかと思われるかもしれませんが、リソースやスタッフの人数、能力、時間などを考えると、これまでは厳しい状況でした。もちろん状況は良くなっていくと思いますが、ここが正念場だと考えています。
今は後半戦に向けて、今年最後の開発を風洞で行っているところです。この実験がうまくいけば実際にアップデートとして投入することになりますが、もちろんこれにはお金がかかるので、投入するかどうかはギュンターと話し合って決めます。良いステップになるようであれば投入しますし、それが今年の残りのレースや2020年に向けても正しい方向性なのかどうかを実際にサーキットで確認できますからね。もし本当に投入するとなれば、時期としては第17戦日本GPのあたりになると思います。
この難しい状況からどう立ち直るかというのは、今年の後半戦だけでなく、これからのチームの成長や物事の進め方に繋がると思うので、後半戦はクルマのパフォーマンスのことだけではなく、マネージメントレベルも含めた組織づくりや問題解決のプロセスを作ることが必要です。