まとめ:autosport web

──今年勝てるようになった最大の理由はレッドブルと組んだことですが、オーストリアで勝つというのは予想していましたか?

尾張:予想していなかったし、優勝するなら第12戦ハンガリーGPが最初かなと思っていた。

柴田:(優勝を狙っていた)第6戦モナコGPで勝てなかったからね。もちろんオーストリアでは2018年にフェルスタッペンが勝ているし、レッドブルにとって有利なサーキットではあっただろうけど、オーストリアに行った時点では勝てると思っていなかった。

尾張:でも勝因が違うじゃない? 僕がハンガリーだと思っていたのは、レッドブルがクルマのコンセプトを間違えていて、前半戦では勝てないと考えていたから。というのもプレシーズンテストの段階で、新しく導入された空力ルールに則った今年のレッドブルのクルマは少し“ズレていた”というのがわかったから、昨年競争力を発揮できたレースで勝てるとは思っていなかった。

 レッドブルが3月に神宮外苑のいちょう並木でデモランをした時に、ヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)に「今年は5勝できるのか?」と聞いたのは僕なんだけどね。あの時マルコはたしかに「5勝する」と答えたけれど、「昨年とは違うサーキットだ」と言っていた。「コンセプトは変えない」とも話していたけれど、それは間違っていない。だから(優勝まで)時間がかかるなと思った。

柴田:昨年と違うということは、要するにモナコでは勝てないということだからね。

尾張:今年のモナコも、2位入賞まで戦えたのはハミルトン側にタイヤ選択のミスがあったからであって、レッドブルに速さがあって競っていたわけではなかった。ということは、モナコは勝てるグランプリではなかったということ。

柴田:今年のメルセデスは低速セクターで速いんだよね。第5戦スペインGPでは、低速の最終セクターでものすごく速かったし、みんなその速さを見て「レッドブル・ホンダがモナコで勝つのは絶対に無理だな」という感じだった。

──たしかに、今年のメルセデスは開幕から8連勝しましたし、付け入る隙がない感じがしますよね。ところでホンダ内では、オーストリアで勝ちに行くと決めていたという話を聞きましたが、真相はどうだったのでしょうか。

柴田:山本(雅史/ホンダF1マネージングディレクター)さん曰く、優勝の伏線というのは第8戦フランスGPのスタートの時に、4台のホンダPU勢のなかでフェルスタッペンにだけパワーロス症状が出たので、その理由をさくらで研究したら、熱に対してコンサバに対応しすぎていたというのがわかったこと。それでオーストリアではもっと攻めようということになったので、山本さんは金曜日が終わった時点で“いけるな”と思って、「優勝するからプレスリリースを用意しておけ」と言っていたとか。

尾張:フェルスタッペンはスタートを失敗していなかったら、もっと楽に勝てたよね。力強いレースだったんじゃないかな。

柴田:メルセデスが冷却に弱点を抱えていたのは知ってた? 僕は全然知らなかったんだけど。

尾張:僕も知らなかった。レース後に聞いたよ。そもそもメルセデスは、予選では2列目を確保したけれど、決勝レースではまったく優勝争いに絡んでいなかったよね。第2戦バーレーンGPでも優勝争いができなかったけれど、あの時はフェラーリがストレートで速かったし、ナイトレースだからレース中の気温もそれほど高くないので、あまり冷却は関係なかったと思うけどね(注:トップを走っていたルクレールにトラブルが起き、最終的にハミルトンが優勝を飾った)。

柴田:そういえば、今シーズンは第7戦カナダGPまで暑いコンディションでのレースはなかったよね。

尾張:今年は異常気象で、フランスとオーストリアはものすごく暑かった。その後のドイツも暑かったけれど、レースはウエットコンディションだったことを考えれば、メルセデスはハンガリーGPだけ優勝を諦めればいいということだったんじゃないかな。狙いを絞った方がいいよね。

柴田:フランスもその前のカナダも暑かったけれど、その2レースはメルセデスが勝ったということは、この2つはストレートが長いから、しっかり冷却ができて欠点が出なかったんだろうね。

尾張:メルセデスのクルマは先頭を走ると速いけれど、2番手を走っているとモロにネガティブな影響を受ける。

柴田:だから余計に(バルテリ)ボッタスがかわいそう。あとオーストリアは標高が高くて空気が薄いから、冷却に厳しいというのもあった。レッドブル・リンクは標高700mくらいの山の中なんだけど、通常だったらありあえないくらい暑かった。気温自体は30度を超えたくらいでも、路面温度が50度を超えていたから。風もなかったんじゃないかな。

 コース脇に行っていた熱田護カメラマンも、「こんなに暑いレースは初めてだ」と言っていたくらい。だからPU的にはきついよね。

尾張:体感的にはドイツの方が暑かったかな。オーストリアは山だから夜になれば気温も下がって寝れるけれど、ドイツは眠れなかったから。

柴田:だから雨が降ってホッとした。ホテルにエアコンがついていなかったからね(笑)。

■大御所記者に叩かれても折れなかったフェルスタッペンの“ふてぶてしさ”

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