「1回のみの思い出作りにするわけではありません。チャンスがあれば来年のチームとの契約とか、年齢の部分(31歳)を気にしている方がいるのは事実ですが、彼が鈴鹿でどういう走りを見せるかによりますけど、もともと、その後につなげていくというのが私たちが考えたプランです」と山本MD。
「ダブルタイトルを獲ったから1回F1に乗せる、という発想は僕にはないです。それはチームにも迷惑を掛けることにもなりますし、やはり線でつないで先に進めて行くというのが、僕がモータースポーツをやる基本の部分ですので」と、2020年のトロロッソとのレギュラー参戦も視野に入れて、悲願でもあるF1で勝てる日本人ドライバーの育成への、並々ならぬ熱意が山本MDにはある。
「もちろん(思い出作りなら)いきなりF1に乗ることも可能なんですけど、F1マシンはスーパーフォーミュラ、スーパーGTとステアリングもスイッチ類も違いますし、乗るからにはある程度しっかり乗せたいですからマルコにはシミュレーターに2~3回は乗せてほしいと。その結果をみて、やはり最後は実走で乗ってみないと彼の本当のパフォーマンスはわからないね、という段階になっています」
山本雅史MDが前職のモータースポーツ部部長の時からホンダのモータースポーツ活動を率いて、今年からF1専任になったが4年目。ようやく、佐藤琢磨以来となる日本人F1レギュラードライバー誕生の可能性が見えてきた。
「今年、ようやくホンダとドライバーがF1を目指すプラットホームが出来てきたと実感しています。メーカーとしてF1チーム、そしてドライバーと一緒に目指して行くというのが、この何年間、できていなかったと思います。今はレッドブル、トロロッソとすごくいい関係にある」と山本MD。
「スーパーフォーミュラという、国内でチャンピオンを獲ってという日本ベースでのF1へのルートになる。日本発でこういうチャンスをつかめるという事実をみんなに見せることができる。日本で戦っているドライバーたちにとっては、将来、新しい道は自分たちで開拓すればできるという意味で若いドライバーにとってはいい刺激になるし、自分たちのモチベーションになると思います」と続ける山本MD。
今回、山本尚貴はピエール・ガスリーに代わって練習走行を走ることになるというが、山本雅史MDもさまざまな想いとともに山本尚貴を日本GPの鈴鹿に送り出すことになる。
「尚貴には実戦でF1で得意の鈴鹿を走った時に、F1に乗ってもここまで走れる、ファンのみなさま、レッドブルの関係者のみなさまにも、日本の育成のカリキュラムでもここまでのドライバーがいるよね、と認められるような走りを見せてほしいなと思います」と鈴鹿の山本尚貴への期待を語る山本MD。
10月11日(金)、多くの期待と応援、そしてプレッシャーを受けながら、山本尚貴がトロロッソ・ホンダのステアリングを握る。ひとつのコーナーごと、そして1周1周、どういったタイムを刻むのか、山本尚貴の走りを注視したい。


