更新日: 2019.10.09 13:37
《ホンダF1田辺TDインタビュー1》いよいよ日本GP鈴鹿。メルセデスとフェラーリとの差とPU開発体制の現在地
──その開発状況についてですが、改めて現在のホンダF1の開発体制を教えて下さい。
「浅木(泰昭)がPU全体の開発責任者で、日本のHRD Sakura研究所で開発を指揮しています。私は現場で2チーム4台のPUの使い方、アロケーション(基数の割り当て)含めてのマネジメントを受けもって現場、サーキット側からPUを使った状況だったり、性能を上げるための要望だったり、使い勝手の向上の要望であったり、問題点などを研究所に伝えます。それを受け取る責任者として浅木がいる。私が現場の責任者、浅木が開発側、日本での責任者になります。現場でもそうですけど、Sakuraの研究所でもエンジニア同士が細かいところでコミュニケーションを取っていまして、最終的な決定には浅木がイエス、私がイエスというかたちでお互いの合意を取って前に進んでいるというかたちです」
──意見が割れて、現場と日本側、それぞれ主張が異なるときなどはどのように方向性は決まるのですか?
「今の開発体制のなかでは、現場の意見をきちんと伝え、現場の意見をきちんと聞いてもらっています。当然、研究開発上の状況は現場の我々も理解した上で、一部妥協するときもありますけど、現場と開発、片方の意見だけで進むようなことはなく『どうするのがベストか』というかたちで話し合って進めています」
「その中で意見が分かれたときは、改めて『何が最適なのか?』とお互い話し合って決めます。実際にはそんなに意見が食い違うということはありませんね。優先順位を入れ替えたりするレベルでの話し合いで、現場の意見を尊重してもらっています。『現場がそうでも研究所の今の開発状況がこうだからこっちを優先する』という場合もありますが、PUの開発に関しては最終的には浅木が判断して決まります」
──ホンダF1の開発拠点は栃木のHRD Sakuraだけでなく、イギリスのミルトンキーンズにもファクトリーがあり、年間21戦+テストの現場、そして栃木、イギリスと大きく3箇所を田辺TDはどのような割合のスケジュールで動いているのでしょう。
「私は基本的にSakuraに戻るのは、レースとレースの合間が2週間あった場合、3~4日程度、Sakuraに出社できるかなというタイミングになりまして、毎戦毎戦、レースのあとに帰るというスケジューリングはしていません。イギリスの方でもやらなければいけないことがありますし。連戦のロシアGP前、シンガポールGPの後には日本に帰国しましたが、その前は8月後半、夏休みのタイミングですね」
──HRD Sakuraに行くときはやはり打ち合わせが中心でしょうか?
「そうですね、打ち合わせが中心になります。当然、メールや電話でメンバー全員含めてコミュニケーションは取りますけど、やはりSakuraに行って1日研究所にいると、ものすごい膨大な量の情報を得られますし、極端に言えば歩いているだけでも情報が得られます。開発設計の部署に行って話をして進捗を聞いたり、ダイナモテストの部署に行けば、その時の状況が把握できますし、こちらの現場やイギリスにいるときに受ける、まとまった状況での報告や連絡の、その周辺情報がかなり入ってきます」
──イギリスのファクトリーでもベンチテストを行いことができる。バッテリーの開発はイギリスで行っていると聞きましたが、イギリスのファクトリーの責任者は田辺TDになるのですか?
「はい。イギリスのファクトリー全体の責任者は私になっていますけど、イギリスの開発部門の責任者はまた別のスタッフが担当していてます。そこの全体の責任者と現場のオペレーションの責任を私が受けもっています。さらに、私は今年はジュネーブにも行くことが多くて、2021年からのF1の新レギュレーションに関してFIAと最後の詰めの段階の協議にも参加しています」
──ちょっと想像ができない忙しさです(苦笑)。そのスケジューリングに加え、当然、レッドブル、そしてイタリアのトロロッソのファクトリーに行くこともあるわけですよね?
「こちらから行くことは今はあまりないですね。1年間のなかで何度かフェイス・トゥ・フェイスのミーティングがありますけど、今はチームのファクトリーではなく、ミルトンキーンズの我々のオフィスに来てもらってミーティングしています。レッドブルはファクトリーが近いので、ちょっと話に行くというのはありますけど、定期的なコミュニケーションに関しては我々のオフィスに来て頂いています」
(第2回:『第二期との違い、現在の信頼性向上の背景』につづく)