更新日: 2019.10.16 20:17
鈴鹿に込めた“レース屋の心”。母国であるF1日本GPに懸けたホンダの思い
「金曜~日曜のスケジュールはもっと単純で、ブリーフィングは走行の1時間前、デブリーフィングは走行の30分後というのが基本です。実際には少し時間が動いたりするんですが、デブリーフィングでは『いま何をやった』、『何が問題』、『これから解析、解決します』という話をして、次の走行前のブリーフィングでは『こういう結論が出たのでこうします』というかたちです」
「我々の場合は走行中からずっとSakura(栃木県の本田技術研究所)、ミルトンキーンズ(イギリスにあるホンダF1の拠点)とインカムで話していて、走行直後に『レッドブル側の問題は?』、『トロロッソは?』とおさらいをして『この点が気になるから調べてください』『これに関してはこちらでやります』と話した後、チームとのデブリーフィングに出ます。チームも同様に、ミルトンキーンズやファエンツァのファクトリーと話をしています」
レース現場のミーティングにおいては、時間を有効に使うため要点だけに絞って簡潔に話をする。その背景では、多くの技術者が膨大なデータを解析し、問題があれば対応策を考え、パフォーマンスの向上を目指して頭脳をフル稼働させている。
「そうした走行前後のブリーフィング/デブリーフィングの間に、ひとつ挟まってくるのが、予選前の“予選戦略会議”なんですよ」と説明するとき、田辺TDの声のトーンが少し楽しそうに変化した。
「FP3のデブリーフィングとは別に“予選をどう戦うか”というのをやるんです。走行前のブリーフィングという意味では、他と同じ位置づけなんですけど、予選前はストラテジーという観点でちょっと面白いんです」
Q1は1セットのアタックでボーダーラインを上回れるから大丈夫。でも、1セットを使う場合にもアタックラップを1回にするのか、クールダウンを挟んで2回アタックするのか。サーキットとタイヤ、コンディションによって選択肢は異なってくる。Q2のタイヤスペック選択に関しても然り――。
「一発アタックで決めるから燃料はこれだけでいいとか、クールダウンを挟む可能性を見て2アタックの燃料を積むとか。“これで充分”というタイムが一発で出てピットに戻ることもあります。コースやタイヤによっても変わってきますが、ドライバーにも一発がいいか、プッシュ/クール/プッシュがいいか、意見を聞きます」
「そのうえで、セッション開始後何分でコースインしなきゃいけないとか、ここでコースインしたら2セットをきちんと使えるとか、1回目は2アタックで2回目は1発アタックで決めるとか、ドライバーはどう走りたいとか」
「去年はずっとトロロッソと仕事していましたが、予選中のドライバーとエンジニアの無線を聞いていても“どうやって生き残るか”という話になります。一方レッドブルでは“Q1は通過できるから、エンジンの予選モードは要らないよ。できるだけ温存しよう”という方向になったりして、大きく違いますよね」
パワーユニットの性能をどう使うか――レースに比べれば外乱の少ない予選において、純粋なエンジン性能の勝負、ライバルとの駆け引きはスタートしているのだ。
「レッドブルは余裕があるからQ3だけパワーを最大限に使うとか、ではないです。データを見ながら進めないといけないので、確認の意味も含めて最初からある程度、引き上げておいて『もう少し行ける』、『これ以上は厳しい』って、調整しながらQ3でベストを引き出せるように努めます」