獲るべくして決めた88回目のPPに、「まるで初めて獲ったような気分がする」と言った王者。その裏にはフレッシュPUのチームメイトに優った実感が込められているようにも感じとれた。34歳にして<初心忘るべからず>、いまやベテランの彼ならではの言葉だ。
スタートから飛び出ると1周目1.681秒、2周目2.002秒、3周目2.771秒、2番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)を瞬く間にリードしていった。以前のようなハミルトン・スタイルを思い出させた。すると技術的問題のため全車DRS機能が使えない事態が発生、独走パターンに持ち込むリーダーはさらにギャップを広げ、燃費もタイヤもしっかりマネージメント。ほぼ半分の26周をミディアムタイヤでカバーし、ハードに変えてからは1分42秒台でひた走った。
09年アブダビGP初年度に勝ったセバスチャン・ベッテルの最速ラップ1分40秒279が、10年間破られずにいた。ハミルトンはその記録を狙った。52周目より一気に2.810秒アップ、1分39秒283を53周目にたたき出す。これ以上に完璧な締めくくりはない。387点+25点+1点=413点、昨年の408点を超えた(今季最速ラップ加点が6点)。
──2014年アブダビGP最終戦から6シーズンにハミルトンは4勝してきている。シリーズ最後の夜を華々しく、圧倒する速さで飾れ、王者は安らぎをみつけたような表情を表彰台で見せた。両脇にいる2位フェルスタッペン、3位ルクレールとそろってシャンパン・ボトルで乾杯、『ルイス・ハミルトン・ショー』の幕は下りた――。

