そんな中でシーズンは開幕。緒戦となったオーストラリアGPで、フェルスタッペンがいきなり3位表彰台を獲得して、レッドブル・ホンダのシーズンは幕を開けた。

 しかし、その後、レッドブル・ホンダはメルセデスとフェラーリの後塵を拝し、4番手が定位置となってしまう。こういう場合、チームはパワーユニットの競争力を理由にするケースが少なくない。しかし、レッドブルはホンダにだけ責任をなすりつけることはしなかった。むしろ、自らの非を認めたのである。

「パフォーマンスが悪いとき、その原因が車体なのか、PUなのかはわかりづらい。だから、パッケージが悪いという言い方で誤魔化してもいいのに、レッドブルは正直に車体が悪いと言ってくれていた。それによって、両者の信頼関係が雨降って地固まるように強化されたと思います」(田辺TD)

 そのうえで、レッドブルは客観的な数字をホンダにデータを見せ、ライバルに対してストレート、高速コーナー、中速コーナー、低速コーナーのそれぞれについて、どこでどれだけ負けているのか、それは空力なのかメカニカルグリップなのか、あるいは馬力なのかについて、きちんと説明してくれたという。

 レッドブルとホンダはお互いを信じ、自分たちがやるべきことに集中していたことが、第9戦オーストリアGPで実を結ぶ。レッドブルはコンセプトを新しくしたフロントウイングをオーストリアGPにフェルスタッペンのマシンだけに投入。ホンダもフランスGPにターボの性能を向上させたスペック3を投入し、さらに暑くなることが予想されたオーストリアGPに向けて、冷却対策を改善させていた。オーストリアGPでのフェルスタッペンの優勝は、偶然でも奇跡でもなく、必然の結果だった。

 その後、フェルスタッペンはドイツGPとブラジルGPでも優勝し、シーズン3勝を挙げた。フェルスタッペンの1シーズンの勝利数の自己ベストは、2017年と2018年の2勝だったから、2019年はそれを更新した。さらにフェルスタッペンは獲得ポイントでも自己ベストを更新し、昨年の249点を上回る278点を獲得し、ドライバーズ選手権でも自己最高位となる3位に輝いた。

 ルノーからホンダにPUを変える決定を下したレッドブルの判断には、多くの疑問の声があった。しかし、それが決して無謀な賭けではなかったことは、この結果が見事に証明している。そして、その結果を導いたのは、技術力の向上だけでなく、パートナーとの強い信頼関係にあったことも忘れてはならない。苦しかった時期でも言い訳することなく、実直に仕事に向き合ってきたホンダ。それが、復帰5年目の2019年に、ようやく認められた。そのことが、2019年のホンダにとって、シーズン3勝という結果以上に、大きな収穫だった。

ホンダF1甘口コラム 2019年総括編(2)に続く

辛口コラムはF1速報WEBで掲載中
ホンダF1辛口コラム 2019年総括編:3勝は誇れる結果だが、予選の速さとエンジンマッピングに課題

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