この日もアルボンがスピンを喫したように、依然としてRB16がスタビリティの問題を抱えているのではないかという声もある。
しかしフェルスタッペンはこれを一蹴した。
「いや、まったくそうは思わないよ。このマシンをドライブしたわけでもないのに、何が分かるんだろうね。たまたま運が悪く風の影響を受けてコントロールを失うこともあるし、プッシュをしていればなおさらだ」
「僕はテストのうちにクルマの限界を確かめておきたかったんだ。開幕戦を迎えてからプッシュしてさらなる速さを見つけるようなことはしたくないからね」
これについては、スピンを喫した直後のアルボンも同じことを語っていた。

セクタータイムを比較すれば、メルセデスAMGは依然として中低速のセクター3が速い。両者の車載映像を比較すると、セクター1からセクター2の途中まではフェルスタッペンがリードしているのに、セクター3終盤の低速コーナーで一気にその差を詰められて逆転されている。
しかしこれはC5タイヤとC4タイヤのメカニカルグリップの差であり、単純比較はできない。そして何より、両者の燃料搭載量は分からない。
結果的にレッドブルはテスト後半にフルレースシミュレーションを行わなかったため、詳しい戦闘力の比較は難しい。しかし少なくとも彼ら自身は自分たちがどこまでいけるのかをしっかりと把握できたはずだ。
ホンダのパワーユニットもそれにしっかりと答え、ストレートスピードはメルセデスAMGやフェラーリを上回っている。
6日間のうち前半2日目午後のレッドブルを除いてそれぞれ1基のICEで走破し、予定通りこのスペックに最終的な微調整とセッティングの熟成を施してメルボルンへと送り出すことになる。開幕仕様が間に合わなかった昨年とは違い、万全の態勢で開幕を迎えることができそうだ。
メルボルンで勝てるかどうか、それはライバルとの相対勝負だけにフタを開けてみなければ分からない。しかしレッドブル・ホンダ自身としては、この冬の間にやるべきことをすべてやり、やれる限りのパフォーマンスを引き出してきた。
勝っても負けても悔いは無い。そんな境地で勝負の年の開幕を迎えることになる。

