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投稿日: 2020.05.10 13:40
更新日: 2020.05.10 13:46

F1名ドライバー列伝(2)ナイジェル・マンセル:判官びいきのファンの心を虜にした不運と良き敗者ぶり


F1 | F1名ドライバー列伝(2)ナイジェル・マンセル:判官びいきのファンの心を虜にした不運と良き敗者ぶり

 プレッシャーはライバルたちにものしかかっていた。レースをリードしたピケはほどなくスピンを喫し、プロストのチームメイトであるケケ・ロズベルグがトップに立った。残り25周の時点で、ピケは2番手まで挽回、マンセルとプロストがその後ろに続いた。

 突然、ロズベルグは、右リヤタイヤのトラブルでリタイア。タイトルを争う3人がトップ3のポジションを争う展開になった。プロストが前に出て、マンセルは3番手だったが、そのままフィニッシュすれば、タイトルをつかむことができた。しかし、F1王座まであと18周という時に、180mphで走行中に、マンセルの左リヤタイヤがバーストした。

 マンセルは奇跡的に高速クラッシュを回避することができたが、ランオフエリアにマシンをとめなければならなかった。そしてその瞬間、タイトル獲得の可能性が遠のいたことを彼は悟った。

 ウイリアムズは予防的な措置で、ピケのタイヤを交換。ピケは残り周回数でプロストに追いつくことができなかったため、プロストが前年に続いてチャンピオンの座をつかむ結果となった。

 マンセルはレース後しばらく、ロザンヌ夫人とともにトレーラーに閉じこもった。しかし敗北してもその態度は潔いものだった。

「ロザンヌはひどく動揺している」とマンセルはイギリスのメディアに対して話した。
「立ち直るのに、少し時間が必要だ。これから家族と一緒に過ごし、久しぶりにいろいろな人に会ったりして、少しゆっくりするよ」

「アランは本当によかったね。でもネルソンは残念だった。フランク・ウイリアムズ(代表)とチームにとっても残念な結果だ。今日彼らは自分たちの責任を果たし、しっかりした判断に基づいた仕事をした」

 シーズンを通して力を発揮しながら、不運な結末を迎える。これこそがマンセルだった。そして彼はどれほど困難に見舞われようと、必ずや立ち直り、目標に再び立ち向かう。この日、失望に沈みながらも、立派な態度を見せたマンセルを見て、大勢のファンが、彼がチャンピオンにふさわしいドライバーであることを知ったのだった。

■1986年オーストラリアGP レースハイライト


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