更新日: 2020.06.16 10:49
【津川哲夫の幻の2020F1メカ私的解説】F1の今後を見据えて。槍玉に挙がるプライベーターのクローンマシン批判への苦言
クローンマシンはいつも何らかの反発を買う。これはF1のチーム間格差が広がれば広がるほど、特に直近のライバルチームは強く反発するものだ。
今回のレーシングポイントRP20への反発も、もちろんそんな裏事情が働いているようだ。現実にRP20を検証すれば、見た目はメルセデスW10に酷似するが内容は大きく違い、モノコックもサスペンションも熱交換器等のインターナルエアロもW10と一線を隠している。そのアプローチの仕方は、まさにレーシングポイント的だ。
多くのメディアは見た目の類似性を指摘するが、RP20のサスペンション、特にフロントは独自のコンセプトを維持していることが、こちらの写真からもわかるだろう。
![メルセデス2019年マシンW10のインターナル](https://cdn-image.as-web.jp/2020/06/16101931/W10InternalCIMG8589-660x440.jpg)
実際、昨年のメルセデスW10のロールロックやシングルトーションバーは採用されず、むしろレッドブル的なシステムを採用していた。もちろんロッカーの回転中心には左右にしっかりとトーションバーが収められ、ロールも許容されていてその制御は巨大なロールダンパーが受け持っている。
![メルセデス2019年マシンW10のサスペンション部](https://cdn-image.as-web.jp/2020/06/16101929/W10-F_SUSUCIMG8703-660x440.jpg)
たしかにエアロのコンセプトはW10型を採用しているが、これはギヤボックスがメルセデス製の供給を受けているために、サスペンションのレイアウトやケーシングの形状が低レーキ(マシンの前傾姿勢)でのフロア下エアロへ特化したものなので、「これを最大限に利用するにはW10型エアロが最も効率が良いからだ」と、テクニカルディレクターのアンディー・グリーンも語っている。
つまり、そもそもレーシングポイントはチーム設立のコンセプトや運営スタンスを見てもハースやアルファタウリとはまったく違っており、レーシングポイントはジョーダン・グランプリから連なる、れっきとした老舗コンストラクターなのだ。
これから先、F1は規則がより厳しくなり、予算の上限を定めた開発の凍結も始まる。制限が厳しくなったなかの開発でアドバンテージを得るのは極めて難しく、金銭的・リソース的に優位なのは、事実上現在のトップ3を形成するワークスチームでしかないのだ(レッドブルもホンダワークスに准ずると考えればだが)。
したがって、今後も間違いなくF1ではクローン車は増加してくるはずだ。そうしなければプライベーターは生き残る術がない。新規参入メーカーが出てこない限り、プライベーターが競争力の高いワークス待遇のPUを手に入れいることは現状、ほぼ不可能に近いのだから。
世の中のメディアやライバルチームは必死に戦うレーシングポイントのRP20に故無き批判をする前に、ワークスチームが君臨する現状のF1グランプリの背景を理解し、しっかりと見据えなければならないことに気づくべきだろう。