更新日: 2020.06.26 16:02
イギリス留学を決めた小松エンジニアの言葉。大学ではベンチテストや風洞実験も/木村のF1英国留学日記
小松エンジニアのインタビューを読んでラフバラ大学への進学を志してから約5年後、僕はラフバラ大学航空自動車工学部自動車工学科という日本では聞きなじみのないであろう学部の学生になりました。
ちなみに英国では機械工学部と自動車工学部が分かれていることが多いです。また、英国の大学は基本的に3年制(学士号)なので、一般的な4年生大学と比べると早い段階から専門分野にフォーカスした講義を受けられます。
またインターン制度が充実しているのも特徴で、大学2年生と3年生の間に休学するような形で1年間、企業研修に取り組む学生が多くいます。僕自身も、この制度を活用してハースF1チームでインターンとして働きました。
僕が在籍している学部は自動車工学部ですが、一言で自動車工学と言ってもクルマはさまざまな工学の集合体なので、基本的には工学全般を幅広く学んでいくことになります。
そのなかにはエンジンの構造および燃焼学、ビークルダイナミクスやパワートレイン技術など自動車に特化した講義もあれば、材料工学や制御工学など、自動車産業で実際に使われている技術にフォーカスして学ぶ講義もあります。
実習も実践的なものが多く、大学の広大な施設を活用しながらエンジンのベンチテストや風洞実験を実際に体験し、解析作業まで行うことで、より現実に近い経験ができます。
大学3年時には欧州最大級のテストセンターを使用して、最高速テストやブレーキテストなど、さまざまな実験を実際に同乗しながら体験し、そのデータを解析するという大学独自のテストウイークがあったりもしました。お恥ずかしながら、最高速&ブレーキテストではクルマ酔いしてしまったので、いい思い出ではありませんが……。
授業内容をすべて紹介することはできませんが、たとえばエンジン分野であれば、1年時に基本的な熱力学や燃焼サイクルなどを学び、2年生になると性質や応用技術、デザイン等、そして3年生でさまざまなエンジン関連の数理モデルの計算や最適化などを学びます。
ちなみに、僕が愛読している雑誌のひとつ『モーターファン・イラストレーテッド』は教材にもなる雑誌で、大学の勉強でも活用しています。
どの科目も簡単ではないですが、いずれも専門性が高い授業なので、自分が勉強している内容が将来どのような形で活用できるかをイメージしやすいため、楽しみながら勉強することができています。
唯一、苦労したことといえば大学寮での食事。僕が大学1年生の時に過ごしていた寮では食事が提供されていました。ただし、ほぼ必ず夕食にジャガイモ料理が出てきたのです。そのおかげで一時はジャガイモの悪夢を見たほど。
またある日の夕食では、ひとつのプレートにマッシュポテト、フライドポテト、ベイクドポテトが仲よく並んで登場したことがありました。あの光景は一生忘れないだろうなと思っています。
さて、今回は僕が留学を決めたきっかけと、英国大学のシステム、そして大学での講義内容を紹介しました。ただし、これはあくまで僕の例です。英国には自動車工学部を持つ大学が多数ありますし、それぞれの大学がさまざまなスタイルのカリキュラムを組んでいます。
また、自動車工学部では専門性の高い授業を受けられますが、授業内容が偏りがちなので自動車業界以外での就職は少し難しくなるといったデメリットもあります。
ただ、世界中から集まったクルマ好き、レース好きと切磋琢磨しながら学ぶのは刺激的なこと。まだまだ道半ばですが留学してよかったなと思います。お読みいただきありがとうございました。