最後に登場したメルセデスのハミルトンには、日曜日のレース前のセレモニーで膝をついて、人種差別へ抗議した行動について質問が目立った。その中で、興味深かったのは元ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のアメリカンフットボール選手のコリン・キャパニックについての質問だ。それは、2017年のアメリカGPで、ハミルトンがキャパニックのトリビュートヘルメットを使おうとしたものの、重大な結果を招く恐れがあるという圧力を受けて断念していたからだ。
キャパニックを知らない方のために補足すると、白人の母親と黒人の父親の間に生まれたキャパニックは、白人家庭の養子として生まれ育った経験を持ち、後に名門サンフランシスコ・フォーティナイナーズのクォーターバックとして活躍した名選手だ。ところが、2016年に人種差別撤廃を訴えて、試合前の国歌斉唱で起立を拒否し、ひざまずくという抗議活動を開始。大きな賛同を得る一方で非難も集中し、2017年にはチームとの契約を終了して以降、事実上、NFLから干されてしまった。
そこでハミルトンは2017年のアメリカGPでキャパニックへのトリビュートヘルメットを使用しようとしたが、上層部からの圧力によって断念したという。だからこそ、開幕戦で自分なりに抗議活動を行うことができたことに満足していた。
「コリンに捧げるためにあのヘルメットはまだ持っている。いまでもコリンとコンタクトしていて、今回のことをすごく応援してくれていた。だから、先週末、膝をつくことを許可し、賛同してくれた(F1と多くのドライバー)に感謝している。彼(コリン)が始めたこの素晴らしい抗議活動が続けられていることをうれしく思っている」
ハミルトンはどんな形であれ、差別が撤廃されるまで抗議活動を今後も続けていくという。
